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ブラックスワン~抜擢人事とムラ社会

林志行

林志行 林志行(早稲田大学大学院経営デザイン専攻教授)

 今年度のアカデミー賞主演女優賞に輝いた映画「ブラックスワン」。バレエ『白鳥の湖』をモチーフに、新人バレリーナ、ニナ(ナタリー・ポートマン)が主役に抜擢され、成功への階段を上がる中での葛藤を描いた作品である。アカデミー賞を取った話題作だが、見た人の感想は、賛否両論。それは見る人の立ち位置によって感じ方が異なるからではないかと考えている。

 新人がプリマへと出世する様は、なんだか、政治の世界に似ていなくもない。いや、ビジネスの世界でも、なんとなく思い当たるフシがある。

 映画の内容をここで語ることは控えたい。

 筆者は、映画を見る際、今抱えている案件や業務への置き換えを良くするのだが、この映画を見ている時に、思ったことは二つ。一つは、抜擢された直後に、どこまで無理をすれば良いのかということだ。もう一つは、競争社会というグローバルスタンダードで見た場合、果たして日本は抜擢された組織で活躍できるような形態になっているのかという問題提起である。

 まずは、抜擢とキャッチアップ。

 業種や業界によっては、旬のようなものがあり、体力や技能の限界を感じ、ひっそり第一線から身を引く人がいる一方で、新たなスターが抜擢される。角界で言うところの、「心技体」が揃うことが要求されるプロの世界であればあるほど、下からの追い上げが激しく、新旧交代は劇的に行われる。そして、そのために支払われる対価は小さくない。

 それは、名誉であり、世間で注目される度合いであり、年俸であったりする。

(こう書いていて、政治の世界は完全なるプロの世界ではないのではと思ったりした)

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