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トルコ総選挙と東南部のクルド人地域

高橋和夫

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 6月12日(日)に予定されているトルコの総選挙に関しての大方の予想は、与党の公正発展党の圧勝である。2002年に成立した公正発展党の政権は、長年トルコに厄病のように取り付いていたインフレを克服し、経済を順調に成長させてきた。2007年の前回の総選挙で、国民は公正発展党に定数550の議会の3分の2に近い341議席を与えた。与党の圧勝であった。

 事前の世論調査によれば、今回の選挙でも公正発展党の同様な勝利が確実視されている。理由は経済であり、外交である。

 昨年後半の経済成長率は10パーセントを超えており、中国と並ぶほどの経済の拡大であった。また外交面でもレジェップ・タイップ・エルドアン首相の活躍が目立つ。

  同首相は、2008年12月に始まったイスラエルのガザ攻撃を激しく非難した。これが、パレスチナ人への同情を強めつつあるトルコの有権者の喝采を浴びた。

トルコのエルドアン首相=朝日新聞社
 春のエジプトでの民衆のデモの際には、ムバラク前大統領に国民の声を聞くように訴えた。エルドアンは賢者としての存在感をイスラム世界で高めている。

 これまでの長年にわたる実質上の同盟国であるイスラエルと距離を置き、イスラム諸国に接近する傾向は、トルコの経済にもプラスに働いている。トルコとイスラム諸国の経済関係が拡大しているからだ。

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