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アニメ、マンガは中東を目指せ

清谷信一

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 筆者は1990年にロンドンに住んでいたが、この頃アニメやマンガなど日本のサブカルチャーは世界で普遍的に受け入れられる商業文化になる、そのように確信していた。このことは当時ロンドンで発行されていた日本人向け週刊新聞「欧州ジャーナル」にも寄稿していた。

 だが当時、そのような予想をする人間は極めて少数派であった。有り体にいうと、妄想の類と受け取られることが多かった。それは筆者がフランスに如何にオタク文化が伝播したかという話を書いた『Le OTAKU ル・オタク――フランスおたく事情』(KKベストセラーズ)を上梓した1998年の時点でも大差はなかった(2009年に講談社で文庫化)。

 当時は政府や外務省は伝統文化や高級な芸術など「威張りが効く」高級な文化ばかりを紹介していた。このため等身大の日本人像が伝わらず、日本のイメージは20世紀末ですら「フジヤマゲイシャ」的なステレオタイプの誤ったオリエンタリズムのイメージが強く流通していた。それを変えたのが現在の日本人の姿を伝えるサブカルチャーの伝播だ。

 国内でアニメやマンガ、更にはポップミュージックやライフスタイルなどが、日本が誇るコンテンツと持て囃されるようになったのは比較的近年のことである。そして一旦そのような認識が定着すると、ややもすれば日本のサブカルチャーに対する過剰評価も目立つようになってきた。どうも我々日本人は情報を過小あるいは過大に評価するきらいがあるらしい。

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