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【復興構想会議から】 「提言」を終えて(下)――漁業問題は蟻の一穴か

高成田享

高成田享 仙台大学体育学部教授(スポーツメディア論)

 漁業問題も「さかな記者」を自称する私にとって、とくに重要なテーマだった。私は5月10日の私案で、地域ごとに、自治体、生産者、加工会社、販売会社などが出資する「地域振興公社」の設立を提案した。生産設備(漁船、農業機械、冷凍・冷蔵庫)の共有化、共同販売、地域ブランドの確立、物産館の開設などによって、農業や漁業の6次産業化をはかるのが狙いだった。

 「提言」では、農業について、「高付加価値化」「低コスト化」「農業経営の多角化」と戦略が示され、高付加価値化の柱には「6次産業化」がうたわれた。一方、漁業では、「漁協による子会社の設立や漁協・漁業者による共同事業化」など、「漁協」中心の復興が示され、「農協」の登場しない農業の復興戦略とは対照的な計画が示された。全体の印象は、私が提案した「水産業」の復興ではなく、「漁業」あるいは「漁協」の復興案にとどまった。

 単なる復旧ではなく、未来に向けた復興という意味で、私は、

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筆者

高成田享

高成田享(たかなりた・とおる) 仙台大学体育学部教授(スポーツメディア論)

1948年、岡山市生まれ。71年に朝日新聞社に入り、経済部記者、アメリカ総局長、論説委員などを経て、2008年から石巻支局長。この間、テレビ朝日系「ニュースステーション」キャスターも経験。2011年2月に退職し、仙台大学教授。東日本大震災後、復興構想会議の委員を務める。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著、朝日文庫)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記――アメリカ総局長の定年チェンジ』(時事通信出版局)、『さかな記者が見た大震災 石巻讃歌』(講談社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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