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中国の海洋進出と密接に関わる核戦略

小谷哲男

小谷哲男 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

 このところ、中国の海洋進出に関するニュースを耳にしない日はない。東シナ海では尖閣沖での漁船衝突事件が記憶に新しいが、この事件を口実に中国はガス田の共同開発に関する日中協議も一方的に拒否している。南シナ海では中国は一方的に同海域の8割の管轄権を主張しているが、周辺諸国が自国の排他的経済水域(EEZ)で行う正当な漁業活動や海底資源の採掘を妨害し、これに抗議するベトナムやフィリピンが実弾演習を行い、米国が航行の自由を掲げて中国を牽制するなど緊張が高まっている。また、いわゆる「第一列島線」を越えて沖ノ鳥島周辺や三陸沖にまで中国の軍艦と政府公船が現れ、示威活動や不法な海洋調査を行っている。

拡大中国の青島市沖に現れた中国海軍の原子力潜水艦=2009年4月、AP
 中国の海洋進出に関しては、海底資源や漁業資源の確保がその目的であると広く報道されているが、それだけでは中国の海洋戦略の全体像を見失う。中国の海洋進出は核戦略と密接に関わっており、このことを見逃しては適切な対応策を打ち出すことはできない。

 中国の軍事戦略上の最優先事項の一つは、海洋配備の核抑止力の確保である。中国は1980年代に092型(夏級)弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を導入し、渤海湾に配備したが、技術的な問題が多く、搭載ミサイルJL(巨浪)―1の射的距離も1700キロ程度に過ぎないため、哨戒活動に出ることはなかった。

 現在、中国は092型を改良した094型(晋級)SSBNを5隻程度導入する計画であり、南シナ海に浮かぶ海南島に潜水艦用の海底基地を建設している。同時に、JL―1を改良したJL―2ミサイルも開発中であり、その推定射程距離は8000キロと推測されている。

 SSBNは長期間にわたって潜航し、敵に見つかることなく核攻撃能力を提供できるため究極の兵器と呼ばれる。中国がこのSSBNの運用に成功すれば、 ・・・ログインして読む
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筆者

小谷哲男

小谷哲男(こたに・てつお) 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

法政大学非常勤講師。1973年、兵庫生まれ大阪育ち。専門は日米同盟と海洋安全保障。日本国際問題研究所研究員及び平和・安全保障研究所研究委員を兼務。同志社大学法学研究科博士課程満期退学。米国ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。平成15年度防衛庁長官賞受賞。平和・安全保障研究所・安全保障研究奨学プログラム13期生。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

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