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金正恩の母の本名は「高ヨンジャ」/それでもまだ残る謎

小北清人

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 高英起(コ・ヨンギ)氏といえば、大阪生まれの在日で、長く北朝鮮問題を追ってきたエネルギー溢れるフリージャーナリストである。いまは韓国のネット新聞「デイリーNK」日本支局長としても活動している。

 その彼が、文字通りのスクープを放った。金王朝の後継者と目される金正恩(キム・ジョンウン)氏(朝鮮労働党中央軍事委副委員長)の実母・高英姫(コ・ヨンヒ。2004年死亡)は、日本で定説とされてきた「済州島生まれの在日朝鮮人プロレスラーの娘」ではなかった、というのがそれだ。数カ月前から、そのような記事がどこかの媒体で出るらしいとは人づてに聞いてはいたが、先頃の「週刊文春」に5ページにわたり掲載された彼の署名記事は、「もう脱帽!」の内容だった。

 この話には、3人の女が登場する。3人とも、済州島生まれで戦前に大阪に渡ってきた在日朝鮮人の父親を持つ。

(1) 高英姫。1953年(52年ともいう)生まれ。北朝鮮指折りの芸術団「万寿台芸術団」に入り、そこで芸術好きの「若き指導者」金正日(キム・ジョンイル)氏の目に留まり、彼の「3番目の妻」となる。彼女の存在によって、「寵愛の対象」から押し出された2番目の妻(元北朝鮮有名女優。金正日氏の長男・正男=ジョンナムの実母)は神経を病み、モスクワの病院に送られる。高は1973年7~9月、万寿台芸術団の一員で来日、主役級で公演。柳日淑(リュ・イルスク)と名乗る。正哲(ジョンチョル)、正恩の2人の息子、娘1人を正日氏との間にもうけ、「奥様」の地位を固める。2004年に癌で死亡。

(2) 高春幸(コ・チュネン)。父親は済州島出身で元柔道家・プロレスラーの高太文(コ・テムン。1920年生まれ)で、リングネームは大同山。在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業で1961年5月、一家で北に渡る。万寿台芸術団に在籍。父親は北朝鮮柔道の指導者となり、1980年に死亡。

拡大高ヨンジャ(右)=筆者提供
 (3) 高ヨンジャ。父親は済州島出身で大阪で働いた高ギョンテク(1913年生まれ)。帰国事業に参加し一家で帰国。父親は1999年死亡。

 高英姫とは何者か。これまで日本の新聞、テレビ、雑誌などでは

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筆者

小北清人

小北清人(こきた・きよひと) 朝日新聞湘南支局長

朝日新聞入社後、大阪社会部、AERA編集部などを経て現在、朝日新聞湘南支局長。92~93年、韓国に語学留学。97年、韓国統一省傘下の研究機関で客員研究員。朝鮮半島での取材歴多数。

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