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北朝鮮の食糧難(3)――収奪によって飢える農村

石丸次郎

石丸次郎 石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

 今、食糧に関連して、北朝鮮の内部でもっとも深刻な問題として語られているのは、「優先配給対象」の中でも、対象者が100万人超と多く、体制維持の要である軍隊への配給が滞っていることである。

 金正日政権は、この「軍隊の飢え」に相当な危機感を持っていると思われ、2011年1月頃から、なりふり構わず国民から「軍糧米」を徴発している。

 もう10年以上も続いていることだが、最初に徴発のターゲットになったのは農村であった。

 北朝鮮では、今も協同農場を基本とする集団農業をやっている。

 協同農場では、一定の土地を50~100世帯が一つの作業班となって耕作する。栽培するのは稲、トウモロコシ、ジャガイモ、豆、麦などが多く、農場ごとに計画(ノルマ)を立てて栽培し、収穫後に国家に一定の割合を納付、残りが農民に現物と現金で「分配」される仕組みだ。

 計画に責任を持つのは各作業班の下にある分組で、達成されない場合は「分配」が減らされる。

 種子や肥料、農薬、ビニールなど営農資材は、本来は農場として(つまり国の責任で)準備することになっていたのだが、現在では「自力更生」の名のもと、農民自身がそのほとんどを出さなければならなくなっている。

拡大農村に食糧の買い出しに向かう都市の女性がたき火をして休憩している。農村では売るものが食糧しかないため、現金が必要な時にはなけなしのコメやトウモロコシを売る=2011年1月、平安北道で、金東哲撮影
 現金収入の少ない農民は、春の植え付けの時期に農場の幹部に借金をして、営農資材費用を捻出する。借金は、秋の収穫後に高い利子をつけて返済しなければならない。まるで封建時代の農園主と小作人の関係のような支配構造が存在するのだ。

 このため収穫後の「分配」は、多くの農場でほとんど農民の手に残らないというのが現状だ。

 問題は、なけなしの「分配」や、自留地(自由に生産物を処分することが許された庭先の土地)の収穫から、さらに「軍糧米」「首都米」(平壌市民への配給や首都整備費用だという)が徴収されていくことだ。

 これは集団農業本来の規定以上の量を収めさせられているわけで、国家による収奪以外の何ものでもない。

 以下は、2010年夏に、公務で中国を訪れた労働党の地方の中堅幹部へのインタビューである。

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筆者

石丸次郎

石丸次郎(いしまる・じろう) 石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

1962年、大阪出身。1993年に朝中国境1400キロを踏破。北朝鮮取材は国内に3回、朝中国境地帯にはおよそ75回。これまで750人を超える北朝鮮の人々を取材。2002年より北朝鮮内部にジャーナリストを育成する活動を開始し、北朝鮮内部の情報誌「リムジンガン」を創刊、現在5号を発行。主著に『北朝鮮難民』(講談社現代新書)など。TV報告に『北朝鮮に帰ったジュナ』(2010、NHKハイビジョン特集)など。

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