山崎幹根(行政学、地方自治論)
2011年07月27日
●立法権を持つ独自の議会を創設
1999年にスコットランドが独自の議会を設置し、国から大幅な権限移譲を受ける分権改革(devolution)を実行してから10年余りが経過した。その間、スコットランドの実践は日本の地方分権、あるいは道州制のモデルとして注目されてきた。
周知のとおり保守党のサッチャー政権は新自由主義的改革を断行した。スコットランドでも、重厚広大型産業のスクラップ、炭鉱の閉山、人頭税の導入、地方政府の一層制化などが進められ、スコットランドは大きな影響を被った。
こうした中、スコットランドでは政権党である保守党の支持が急減し、総選挙のたびにスコットランド選出の保守党議員が少なくなり、労働党をはじめとする野党の議席が増加した。すなわちスコットランド市民は国会議員を選出しているにもかかわらず自分たちの声が政府に届かない一方、スコットランドの社会を変える改革が中央政府から一方的に押し付けられる状況に置かれた。これは「民主主義の赤字(a democratic deficit)」と呼ばれた。スコットランド分権改革とは、このような事態を打開するために自分たちの議会の設置を求める広範な社会的、政治的な運動に他ならない。
●多党制のもとで地域政党が躍進
こうした経緯から創設されたスコットランド議会では、ロンドンのウェストミンスター議会とは異なる「新しい政治」を実践しようとする努力を重ねている。例えば、小選挙区に加えて少数政党が有利に議席を確保できる比例代表制を組み合わせた選挙制度のもとで多党制の議会が形成されている。そして現在、スコットランドのイギリスからの分離独立を党是とする地域政党であるスコットランド国民党(SNP―the Scottish National Party)が政権の座にある。
独自の議会設置によって、ロンドンの国会では成し得なかったであろう政策や、全国より早く先進的な法律を制定することができた。最も象徴的な政策は、レストランやパブなどの公共空間での
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