脇阪紀行
2011年07月29日
さて今回からは、北欧にあって原発を推進しているフィンランドを取り上げよう。原発の建設停滞の空気を打ち破って、建設に乗り出し、「原発ルネサンス」の旗手ともされるこの国は、一方で、厳格な原発の安全性を追求し、「核のゴミ」の直接処分場の建設にも取り組んでいる。その苦闘する姿、取り組みの成否は、これからの世界の原発の行方に大きな影響を与えるのは間違いない。
●21世紀の「原発神殿」
イスラム寺院を連想させるような坊主頭の巨大なドームである。
この小さな島でいま、世界最大級のオルキオト原子力発電所3号機が建設の真っ最中にある。フランスの原子力大手アレバ社が請け負い、「世界で一番安全な原発」というのがうたい文句だ。
深く切れ込んだ入り江に立つと、300メートルほど先の対岸に、1号機と2号機の赤茶色の原子炉やタービン建屋が見える。海に近い一番左手が建設中の3号機だ。
運転開始の予定は2013年。2基の原発がすでに稼働するこの島は、フィンランド最大の「エネルギー基地」と言っていいだろう。国会は2010年、新たな4号機の新設計画を承認した。
その坊主頭に取りすがるかのように、黄色に塗られた建設用のクレーンがにょきにょきと地上から突き立ち、鉄骨や機器を原子炉に運んでいる。土日もなく、24時間の突貫工事を続ける現場には、ポーランドなどの外国人を含め、数千人の労働者が日夜働き続けている。
原発を所有、運転するTVO社(Teollisuuden Voima Oyi)の女性エンジニア、カテ・サルパランタさんの案内で、一気に階段を上がって格納容器の6階部分に上がった。高さ40メートルの最上階にぽっかりあいた工事用の横穴の向こうに、ボスニア湾の島々の姿が目に入る。
ヘルメット姿の現場監督が、ブルブルというエンジン音が鳴る中を近づいてきて、耳元でどなった。ドームの天井には、むき出しになった鉄骨が見える。格納容器の何千トンもの重量を、声を出さず、歯を食いしばりながら懸命に支えているようだ。
2002年5月、フィンランドが原発の新設を決めたニュースは世界に波紋を与えた。チェルノブイリ原発事故によって先進諸国は原発建設に及び腰になっていた。その雰囲気を打ち破るものだったからだ。
オルキルオト原発3号機は、出力160万キロワットの欧州型加圧軽水炉(EPR)と呼ばれている。アレバ社が原子炉部分、ドイツの重電大手シーメンス社がタービンなど発電部分を担当することで契約が結ばれた。設計上の原子炉耐用年数は60年と、世界最長の水準だ。
●フランス、中国でも建設中
このEPR型原発の行く末は、
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