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イスラエルが占領地産品のボイコットを禁止

高橋和夫

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 7月7日、イスラエルのクネセット(議会)は、入植者の生産した産品のボイコット運動を禁止する法を成立させた。この法によれば、ボイコット運動によって被害を受けた入植者は、ボイコットを呼びかけた個人や団体に対して補償を求めることができる。

ヨルダン川西岸の入植地アリエルでは、住宅建設にむけた整地工事が始まっていた=2010年10月、撮影・朝日新聞エルサレム支局
 イスラエル政府はパレスチナ占領地であるヨルダン川西岸地区への入植活動を続けているが、国内には入植に反対する人々もいる。こうした人々は、全占領地から撤退し、そこにパレスチナ国家を建国し、イスラエルとパレスチナ国家の共存による平和の達成を目指している。

 占領地からの撤退を迫る手段として、こうした人々が使ってきたのが、入植地産品のボイコットである。占領地産品のボイコット運動は1997年に「グシュ・シャローム(平和ブロック)」という名の平和団体が呼びかけを始めた。この運動はイスラエル国内で多くの賛同者を得たほか、ヨーロッパにも影響を及ぼしている。

 現在EU(欧州連合)とイスラエルの間には貿易協定が存在し、イスラエル産品は安い関税でヨーロッパに輸出できる。しかし占領地の産品となると関税が高くなる。またヨーロッパの市民団体が占領地産品のボイコットを行っている。

 たとえば死海のミネラルを使ったアハバ社の化粧品が、ボイコットの対象となっている。米国でも市民団体による「盗まれた美」とか「アハバは汚れた企業」とかのキャッチフレーズによるボイコット運動が存在する。アハバの工場が占領地であるヨルダン川西岸地区に位置しているからである。このアハバは、日本のデパートにも

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