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暴動は一過性のものではない

佐藤優

佐藤優 作家、元外務省主任分析官

 8月6日、英国のロンドン北部で、無職の黒人男性マーク・ダガン氏(29歳)が警官によって殺された。警察当局はダガン氏が<ジャマイカ系ギャング集団に属し、麻薬や銃取り引きに関与していたと見ているが、家族は全面否定し、「人種差別だ」と猛反発している。>(8月9日読売新聞電子版)ということだ。

ロンドン東部で8月8日、炎を上げて燃える車のそばに立つ警察官ら=ロイター
 この事件をきっかけに英国全土で暴動が発生した。キャメロン首相は休暇を切り上げ帰国し、暴動を力で押さえ込もうとしている。警察だけでなく、軍を動員し、さらにネット規制の動きがでている。この点については、朝日新聞の記事がよくまとまっている。

<英暴動、首相の対策に批判 軍に支援任務・ネット規制

 英国で広がった暴動をキャメロン政権が力で押さえ込む方針を表明した。鎮圧や拡大防止のため軍の支援を仰いだり、ネットを規制したりする考えにも言及。だが、こうした「こわもて」策には人権上の懸念や「緊縮財政の見直しこそ先決」との声が上がる。

 キャメロン首相は11日に臨時招集した議会で、顔を隠すフードを脱がせる権限を警察官に与えるほか、暴動参加者を公共住宅から退去させる措置を公表。軍を直接動員することは否定したが、警察が暴動対策に専念できるよう支援任務に当たらせる考えを示した。

 またソーシャル(交流)メディアやスマートフォンのメッセージ機能が暴動を拡大させたとして、これらのサービスを一時中止することを業界などと協議していることも明らかにした。

 だが、野党の労働党や与党・保守党のジョンソン・ロンドン市長は「警察官が市民の目に見えるところにいることが治安維持に欠かせない」とし、まず政権が進める警察を含む一律2割の財政削減を見直すよう要求。ネット規制にも「表現の自由を侵害する」との懸念のほか、「海外にサーバーがあれば無意味」との指摘も出ている。>(8月12日asahi.com

 英国は人権を至上価値とする民主主義国というのが日本における常識だ。しかし、この常識は

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