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【北欧エネルギー事情<11>】 フィンランド編(その5)――世界初の「核のゴミ」処分地を訪ねて

脇阪紀行

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 前回、フィンランドが原発の安全性を重視するがゆえに、そこで生まれる負担増を生み出し、それを引き受けざるを得ない姿を紹介した。私の目には、「負担と犠牲にむしろ真摯に向き合おうとしている」とさえ思えた。次に紹介する世界初の使用済み核燃料の最終処分場は、そのもう一つの姿である。

●白鳥の浮かぶ島で

 ボスニア湾を西側に望むオルキルオト島。

 入り江を歩くと、水辺に育つ木々の新緑が目にまぶしい。視線を下げると、深い藍色の静かな水面で一羽の白鳥がゆったりと羽を休めている。はるか南の地域から飛来し、夏の間、ここで過ごすのだろう。

 さわやかな一陣の風が入り江を吹き抜けた。森の静けさがあたりを包みこむ。

 この小さな島の一角でいま、使用済み核燃料を地下深くに永久貯蔵するオンカロ最終処分場が建設中だ。2020年に稼働が始まれば、世界初の処分場となる。デンマーク人監督が地下深くにある処分場を撮影し、話題を集めたドキュメンタリー映画「10万年後の安全」の舞台となった地でもある。

 なぜ、世界初となる使用済み燃料の貯蔵地に、この島が選ばれたのか。

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