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中国の空母計画(下)――政治的影響力を過小評価してはならない

小谷哲男

小谷哲男 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

●「非対称兵器」としての中国空母

 中国はようやく試験用の空母を手に入れたばかりである。作戦用の空母の開発と維持・運用には天文学的な費用と多大な時間がかかる。空母は非常に複雑なシステムで、メンテナンスと訓練を欠かすことができない。通常1隻の空母が作戦を行うことができるのは1年のうち3~5ヶ月のみであるため、3隻を1組として運用するのが基本である。

 中国人民解放軍の陳炳徳総参謀長は去る6月に空母の建造を認めたが、これは上海で建造中の国産空母のことを指しているようである。米軍はこの国産空母の運用が2015年以降に始まるとみており、中国が2020年までに複数の空母を保有するのは確実であろう。原子力空母の開発を進めている可能性もある。

 しかし、空母は単艦では運用できず、艦載機に加えて戦闘艦、潜水艦、補給艦などと打撃群を構成する必要があり、これを実際に運用するには10年単位の年数がかかるであろう。

 さて、中国が空母打撃群を保有した場合、地域の軍事バランスにどのような影響を及ぼすだろうか。まず、中国の空母打撃群が、1個で中級国家並みの打撃力を持ち、防衛圏は半径700キロに及ぶといわれる米海軍のそれに匹敵する戦力にはなり得ない。まず、既述のように、スキージャンプ式空母では運用できる艦載機の能力に限界がある。また、空母はミサイルと潜水艦に対して非常に脆弱であるが、米海軍はイージス防空システムと世界中に張り巡らせた早期警戒網及び対潜水艦哨戒網、そして同盟国の支援によって空母を守っている。中国もある程度の防空システムは保有しているが、イージスシステムに匹敵するものではなく、ミサイル攻撃に対して脆弱であることには変わりない。

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筆者

小谷哲男

小谷哲男(こたに・てつお) 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

法政大学非常勤講師。1973年、兵庫生まれ大阪育ち。専門は日米同盟と海洋安全保障。日本国際問題研究所研究員及び平和・安全保障研究所研究委員を兼務。同志社大学法学研究科博士課程満期退学。米国ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。平成15年度防衛庁長官賞受賞。平和・安全保障研究所・安全保障研究奨学プログラム13期生。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

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