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【北欧エネルギー事情<12>】 フィンランド編(その6)――10万年後の安全

脇阪紀行

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 映画「100,000年後の安全(原題はInto Eternity)」で、デンマーク人のマイケル・マドセン監督はこの永遠の死が果たして、約束されたものなのかどうか、という根本的な問題を追求している。

最終処分場のトンネル=筆者撮影

 地下の暗闇をマッチで照らして、一瞬の明るさを作る。そうした印象的な手法を使いながら、監督は次のような問いかけをする。

 「10万年後の未来がどのような世界か、果たして、我々は知っているのだろうか」

 「10万年前、地球には人類の祖先がやっと生まれたばかりだった。これから10万年の間には氷河期が再び来るだろう。10万年後の未来、今の人類とその文明が果たして、生き残っているのだろうか」

 ある世代が次の世代に交代するまでに少なくとも約30年の歳月がかかる。100年に3代の世代交代が起きるとすれば、1万年の間に300代が過ぎ、10万年だとそれが3000代となる。想像を超えた時間の長さに目がくらむ思いがするのは私だけではあるまい。

 この長時間にわたる使用済み燃料の貯蔵という事実が生み出すのは、人類の存在にかかわる深刻な問いかけだけではない。時に、ユーモラスな問いが発せられる。

 「将来の人類が、この最終処分場の存在を知ったら、どういう風にメッセージを伝えればいいのだろうか」

 そんな問いかけに、処分場関係者は戸惑ったように答えている。

 「ここには近づくな、それだけだ」

 しかし問題は、

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