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政治不安で悪化するシリア経済

高橋和夫

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 3月以来シリアでは、民主化を求める大衆と弾圧する政権の間で精一杯の力比べが続いている。政治不安は、シリアの経済に深刻な影響を与えている。ワシントンにあるカーネギー財団中東センターのラフチェン・アチ研究員によると、今年のシリアの経済成長率は3%と予測されていたが、政治不安の影響を受け、逆に少なくとも5%のマイナス成長となるだろう。つまり5%の経済の縮小である。

拡大シリアのアサド大統領=ダマスカス

 シリアの外貨収入で最大の稼ぎ頭は、観光である。雇用でも国内総生産でも、およそ1割を占める重要産業ではあるが、各国政府はシリアへの旅行の中止を勧告しているし、旅行会社はパッケージ・ツアーをキャンセルしている。厳しい状況のようだ。

 シリア政府は近年においては観光事業に巨額の投資を行ってインフラを整備し、観光客の誘致に成功していただけに、衝撃も大きいだろう。たとえば2008年には600万だった外国人訪問客が2010年は4割増しの850万にまで激増していた。この観光収入の大半が失われる。

 もう一つの外貨収入の柱である石油輸出に関しても将来が危ぶまれる。

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筆者

高橋和夫

高橋和夫(たかはし・かずお) 放送大学教養学部教授(国際政治)

北九州市出身、放送大学教養学部教授(中東研究、国際政治)。1974年、大阪外国語大学ペルシャ語科卒。1976年、米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『アメリカとパレスチナ問題』(角川書店)など多数。ツイッター https://twitter.com/kazuotakahashi ブログhttp://ameblo.jp/t-kazuo 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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