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【北欧エネルギー事情<13>】 フィンランド編(最終回)――電力自由化の中で

脇阪紀行

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 フィンランドの原発の歴史には、紙・パルプ産業を中心とする産業界の動きが背景にあることはすでに触れた。大量の電力を安定的に安く手にしたい。その動機が産業界の背中を押してきた。ただ、欧州統合が進むにつれて、電力市場も自由化され、エネルギービジネスもますます国境を越えて活動するようになっている。新たな環境の中で、企業はいま、どのように行動しているのだろうか。

●エネルギー事業は「小さな巨人」

 この国最大の紙・パルプ企業UPMの首都ヘルシンキにある本社を訪ねた。

 UPM社は典型的な多国籍企業だ。いくつかの有力企業が合併して1996年に生まれた。年次報告によると、2010年の売上高は89億ユーロ(約1兆円)、世界15カ国に2万2000人の社員が活動している。フィンランド人社員の占める割合は4割で、残り6割が欧州やアジアの出身者だ。

 売上高の国別構成を見ると、なんとドイツが一番大きく、全体の15%を占める。次いで、英国(11%)、フィンランド(9%)、フランス(6%)と続く。売上高の7割が欧州だが、アジアが14%、北米が12%と、活動は国境を越えている。

 フィンランドなど3カ国で98万ヘクタールの森林を持ち、独仏英、中国、米国など世界の19カ所に紙の生産工場を持っている。紙・パルプ生産で売り上げの7割近くを占め、そこに木材や合板生産を加えると8割を超える。新規事業として、バイオ燃料やバイオ化学の研究にも取り組んでいる。

 目を引くのは、本来、縁の下の力持ちとして、本業を支える役割を担ってきたエネルギー事業の成長ぶりだ。

 売り上げでは全体の3%しかないが、前年比46%、全体の3分の1にあたる2億3700万ユーロもの利益を稼いでいる。この会社にとって、エネルギー事業は、成長の続く「小さな巨人」と言ってもいい。

 一体、どんな事業をやっているのだろうか。

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