メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS
●「超大国」を危うくした無謀

 ちょうど10年前の米中枢同時多発テロ。当時のブッシュ米政権は「対テロ戦争」を宣言して、アフガニスタンを攻撃し、強引にイラク戦争に突入した。

拡大東京の米国大使館前で、Tシャツやプラカードを掲げてイラク攻撃反対を訴える人たち=2010年8月

 その間、米国は、「アメリカがアメリカではなくなったような」印象を世界に広げた。中東、南アジア、欧州などで令状なしに拘束したテロ容疑者を秘密裏に輸送して、キューバ・グアンタナモ基地内の収容施設で拘束、拷問と言えるほどの過酷な取り調べを行った。米国民を対象とする違法な電話盗聴も拡大した。自由・民主・人権という米国の旗印が踏みにじられたのである。

 イラク戦争開戦に向けて世論を誘導するため、虚偽の情報を使ったプロパガンダも展開した。2003年1月の一般教書演説で、ブッシュ大統領は「イラクはアフリカでウラン入手を図った」とウソの情報を公言した。チェイニー副大統領らは「同時テロの実行犯がチェコでイラク情報機関員と接触した」との情報を繰り返し広言、多くの米国民はイラクが同時多発テロに関与していたと思い込んだ。

 副大統領やラムズフェルド国防長官らタカ派は、国務省が立案したフセイン政権崩壊後の再建計画を完全に無視した結果、イラクは内戦状態に陥った。

 ゲリラ戦に長けたペトレアス将軍(現米中央情報局=CIA長官)が指揮した増派作戦でようやくイラク情勢が沈静化、2010年8月末、米軍戦闘部隊の完全撤退にこぎ着けた。

 同時テロで死亡した米国民らは約3000人だが、これまでの米軍側死者はイラクで4474人、アフガニスタンで1754人と計6200人を超え、同時テロ被害者の2倍以上の命を失った。それでも、内部告発サイト「ウィキリークス」が入手した米秘密文書によると、

・・・ログインして読む
(残り:約1019文字/本文:約1731文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

春名幹男

春名幹男(はるな・みきお) 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

1946年京都市生まれ。大阪外国語大学卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局、ワシントン支局長。名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授をへて、現在、早稲田大学客員教授。ボーン・上田記念国際記者賞・日本記者クラブ賞受賞。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『秘密のファイル―CIAの対日工作』(共同通信社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

春名幹男の記事

もっと見る