2011年09月11日
2008年からは宮城県・石巻支局長として地方や漁業の話を取材しながら、米国の超大国というバブルが崩れていくのを横目で見ていた。今年2月に朝日新聞社を退社、その直後に東日本大震災が起き、私の人生にとっての最大の出来事は9・11から3・11に変わった。米国も私の人生もずいぶんと変わったのに、あれから「まだ10年」なのだ。
この10年の世界の変化を見ると、冷戦後の唯一の超大国だった米国の時代が終わったという思いが強い。ソ連が1991年に崩壊したあと、軍事的に唯一の超大国となった米国は、世界の警察官を自認し、世界ににらみを利かせていた。一方、IT(情報技術)革命とグローバリゼーションという冷戦後の世界に米国がもたらした大きな経済潮流は、少なくとも21世紀の前半は、前世紀に続いて米国の世紀になるとの予感を抱かせていた。
しかし、わずか10年後の世界を見れば、イラクとアフガニスタンとの二つの戦争によって、米国は世界の安定に寄与するどころか混乱させる原因になったままだし、経済の覇者としての存在も、国内に大量の失業を抱え、貿易赤字によって世界にまき散らかしたドル債務をドル安によって帳消しにしているように見える。
9・11の前、私は世界を楽観的に見ていた。グローバリゼーションによる世界経済の底上げで、人々の暮らしが良くなれば、世界はより平和になり、安定すると思っていたのだ。マクドナルドが出店するような国は中産階級が育ってきているので、人々は戦争よりもマクドナルドを求める。そんな「黄金のM型アーチ理論」を『レクサスとオリーブの木――グローバリゼーションの正体』(東江一紀、服部清美訳、草思社)で展開したのはトーマス・フリードマンで、私もこのM型アーチ理論に期待をしていた。
しかし、
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