谷田邦一(たにだ・くにいち) 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)
1959年生まれ。1990年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て2013年4月から社会部専門記者(防衛問題担当)。主要国の防衛政策から最新兵器、軍用技術まで軍事全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識が、現実の紛争地でどのくらい役立つのか検証取材するのが夢。
今年12月の最終決定に向けて、どういったポイントが勝敗を決するのか。イラク戦争の指揮官でもあった前・英空軍参謀長のグレン・トーピー卿に、日本のFXの行方を聞いた。
トーピー氏は湾岸戦争後の砂漠のキツネ作戦やNATOのコソボ作戦などにも参加、トーネードやタイフーンなどの戦闘機パイロットとして4300時間の飛行記録をもつベテランでもある。2009年に英空軍を退役し、2011年1月から防衛産業大手のBAEシステムズの上級顧問を務めている。
――日本にはよくおいでになるのですか。
トーピー 3度目です。日英の空軍トップによる相互訪問で、4年前に初めて日本を訪ね、田母神俊雄・航空幕僚長(当時)と会談しました。今回は、旧知の岩崎茂・空幕長など防衛省関係者とお話しする機会がありました。岩崎氏とは同じパイロット仲間として話が弾み、国連決議にもとづきNATOが制裁をおこなっているリビア情勢などについて意見交換しました。
――リビア制裁といえば、英国とフランスの戦闘機が主力ですね。
トーピー ええ、空対地攻撃が中心で、英空軍は16機のユーロタイフーンを投入しました。1日あたりの出撃回数は5回くらい、目標の命中率は97%と高く、作戦はうまくいきました。今回の特徴は、空爆による巻き添えを最小限にするため、ピンポイント攻撃が可能な最新式の小型弾頭の爆弾(PavewayIV)を多用したことです。
――アジアでは、中国の軍事的台頭があちこちで摩擦を引き起こしています。日本周辺の国際情勢をどう見ていますか。
トーピー 沖縄周辺が、世界でも脅威度の高い不安定な地域であることは確かです。相手が中国だとすれば、質や量の両方の問題があります。一般に、脅威は相手国がどんな意図と能力をもっているかで決まるといわれます。一番大事なのは相手の能力ではありません。相手がどんな意図をもっているのかについて、しっかりと政治的な情報(political intelligence)をつかむことです。能力はあっても、意図がなければ脅威ではありませんから。
――そういう地域で防空任務にあたる航空自衛隊にとって、どんな戦闘機が必要とお考えですか。
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