2011年09月21日
広さ60坪ほど、ハンバーガーやコロッケなど軽食の類がいろいろ売られ、ちょっとした平壌名物になっているというこの店、客の多くはそれなりにカネを持っている人たちのようです。運営は「総連課」、つまり日本の朝鮮総連を指導している機関です。
かつて朝鮮総連が巨額のカネや物をひんぱんに北に貢いでいたころは、本国の担当機関も潤って羽振りが良かったものでした。ところが日本人拉致を金正日総書記が認めた2002年9月以来、朝鮮総連は組織離れと資金力悪化に歯止めがかからなくなり、それに伴って北の担当機関も朝鮮労働党内部での影響力を失い、党内の位置づけも二転三転、いまは党の外局のような存在になっているようです。
資金難に喘ぐ本国の総連課に「助けて欲しい」と泣きつかれたのか、朝鮮総連側がカネを捻出し、実現したのが、この店だといいます(朝鮮総連が北の体制にがんじがらめなのは言うまでもありません)。
で、この店には妙な特徴があることが、わかりました。それは、
「カレーうどんの味の濃さが客によって違う」
ということでした。外国人や、北朝鮮人でも外貨を持つ羽振りの良さそうな客が相手だと、定量のカレー粉がカレーうどんに使われるのですが、地元の普通の人が客だと、出てくるカレーうどんの汁がめちゃめちゃ薄い。定量の半分ほどしか使われてないんじゃないかというのです。事情に詳しい関係者はこういっています。
「総連課の担当者はカレーを外貨で外国から買ってこなきゃならない。だからカレーの消費量をできるだけ節約しようとするんだろう。客次第で差別するのはあの国では当たり前。それだけじゃないよ。そうやって余らせたカレー粉を関係者が山分けし、横流ししている可能性もあるね」
カレー粉を市場に横流ししてカネを稼ぐとか、自分たちでこっそり食べてしまうとか。例えばそういうことですね。
実はこの「横流し」こそ、いまの北朝鮮経済を理解するキーワードの一つなのです。
このたびの、小さな船に乗って北朝鮮東海岸の清津近くの漁港を脱出(9月8日)、石川県能登半島沖で保護(同13日)された9人の脱北事件は、彼らの希望通り、韓国行き実現で決着の見込みです。年に数千人の脱北者がさまざまなルートで韓国入りし、その累計は昨年末に2万人を超えました。日本海域での脱北者漂着としては3件目といっても、脱北自体はもはや珍しいものではありません。
保護された9人のうち、責任者と名乗る男性は日本政府の調べに、「自分は北朝鮮の軍に所属し、働いていた漁師」と説明したそうです。「タコ漁をしていた」と述べたそうですが、「スルメイカ漁」の誤訳でしょう。韓国語の「ナクチ」はタコの意味ですが、北朝鮮で「ナクチ」はスルメイカを意味しますから。
それよりも、筆者がオッと思ったのは、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください