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冷たい海の静かな戦争:北極海をめぐる地政学(中)――北極航路の可能性

小谷哲男 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

 北極海を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路の開発は、大航海時代にまで遡る。当時のヨーロッパの探検家たちは現在のロシア沿岸を東へ、カナダ北方の島々の間を西へと進み、太平洋を目指した。

 そして、これらの航路はそれぞれ、北東航路、北西航路と呼ばれるようになった。北西航路はこれまで商業航路として本格的な利用には至っていないが、北東航路はソビエト体制の下で北極海航路と呼ばれ、国内物流の重要な柱であった。その後、1987年のゴルバチョフ書記長による北極海解放演説を受けて、北極海航路への国際的関心が高まった。

拡大北極航路が開通すれば物流に大きな影響を与える

 北極航路は従来のスエズ・パナマ両運河を通る航路を大幅に短縮する。北極海航路を通れば、ハンブルク・横浜間の距離はスエズ運河を通る航路より40%(5000海里)軽減され、航海期間も1週間短縮される。大型タンカーであればこれにより20%の経費節減が可能となり、海賊多発海域である南シナ海やソマリア沖を回避できる。また、北西航路を通れば、ロッテルダムとシアトルの距離は通航に時間がかかるパナマ運河を通る航路より2000海里短縮される。これらの航路はもちろん軍艦、特に潜水艦にとって重要である。アメリカは北西航路を通じた潜水艦の潜航を近年増加させている。

 1990年代に、東京にあるシップ・アンド・オーシャン財団(現海洋政策研究財団)はロシア及びノルウェーと共同で北極海航路の商業利用の可能性について国際北極海航路研究(INSROP)を行ったが、過酷な気候のために特別な船舶や砕氷船の導入が必要となるため、技術面からも経済面からも北極海航路はペイしないと結論づけた。

 しかし、2000年代に入って海氷の融解が進んだため、北極海航路への関心が再び高まっている。

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筆者

小谷哲男

小谷哲男(こたに・てつお) 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

法政大学非常勤講師。1973年、兵庫生まれ大阪育ち。専門は日米同盟と海洋安全保障。日本国際問題研究所研究員及び平和・安全保障研究所研究委員を兼務。同志社大学法学研究科博士課程満期退学。米国ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。平成15年度防衛庁長官賞受賞。平和・安全保障研究所・安全保障研究奨学プログラム13期生。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

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