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北大HOPSマガジン 【東アジアを考える】 ポスト共産党王朝を見据えた日中関係を

鈴木賢(比較法、中国法・台湾法)

●メディア統制に緩み?

 去る7月25日に中国浙江省温州市郊外で発生した高速鉄道事故は、猛スピードで経済発展を続ける中国の危うさを改めて内外に印象づけた。皮肉にもこの事故の直前、6月末には北京と上海を結ぶ新線が、突貫工事で共産党建党90周年に合わせて開通し、それが中国の「独自」技術によるものであること、世界一のスピードで走ることを誇らしげに宣言したばかりであった。事故処理をめぐる当局の迷走ぶりが、新聞、テレビなどの伝統的なメディアを通じて伝えられると、中国国内ではインターネット上で激しい当局批判が巻き起こった。

拡大鉄道事故直後、真相究明などを訴えた中国広東省の各紙

 近年、炭鉱事故、大規模交通事故・火災、警察や都市管理部門などと市民の衝突や暴力沙汰、深刻な環境汚染による被害、大規模自然災害などのいわゆる突発性事件が起きると、しばしばネットを通じてメディアが伝えない情報、当局への批判が駆け巡る。

 今回の事故で特徴的だったのは、当初、「新京報」などの新聞や貴州テレビなどの伝統メディアまでが鉄道部に対する批判的な報道姿勢を見せたことであった。共産党はこれまで主要幹部の人事、軍隊と並んでメディアに対する統制を政治支配の有力なツールとしてきた。

 もっとも、伝統メディアに対する党の統制に緩みが生じていると断ずるのはまだ早計かも知れない。まもなく党の宣伝部が本件についての報道を厳しく規制するお達しを発すると、独自の報道は直ちに姿を消したし、「新京報」などは広東の有力紙・南方週末から北京市党委員会宣伝部へと所管が変更された。

●共産党王朝は末期?

 天安門事件を経て90年代に入り、中国では一党支配の政治システムのもと、「政治寄生的資本主義」(M・ウェーバー)とも形容すべきいびつな資本主義が増殖している。つまり、資本と政治権力が結びついた特殊な資本主義が貧富の格差を拡大させながら、長期にわたる高度経済成長を導出してきた。

 このように経済領域では多元的利益主体間での競争を許しながら、政治体制においては権力をめぐる諸政治主体間の競争機制(=民主的選挙)導入を依然として峻拒し続けている。共産党は天安門事件で民主化要求を実力でねじ伏せる代わりに、金儲けに関しては一切のタブーを廃し、金欲、物欲を解き放った。これは民主化を求めた人々との一種の「取引」だったと言えるだろう。

 しかし、

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