メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

中国の空母建造の野望を歓迎する(下)――人民解放軍の弱体化へ

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 前回も述べたが、中国の空母運用能力が米国と対等といわないまでも、せめてロシア並みの空母運用能力を有するには、少なくとも後20~30年はかかるだろう。また早期警戒機や護衛艦隊の能力などを鑑みれば、中国の空母が遠洋で作戦を行うことは難しいだろう。

 更に艦載機の質も西側のそれに比べて未だ大きく劣っている。最新型の戦闘機J-10の艦載機型を開発するにしても、J-10の能力はF-16のA/B型程度だといわれており、現用のF-16の最新型に比べればまだまだ低い。

 また中国軍はインド軍と並んで戦闘機の機体の損失が大きい。これは機体の品質、信頼性、整備能力などが低く、パイロットの飛行時間がこれまた短いからだ。これが洋上を飛ぶ艦載機、しかもJ-10やJF-17など単発機をベースにした機体では損耗率はかなり高くなるだろう。

拡大中国は空母を建造する一方で、米国との軍事協力も進めている。歓迎式典で中国軍兵士の前を歩くゲーツ米国防長官(右、当時)と梁光烈国防相(中央)=2011年1月、北京市内

 双発機ならば洋上でエンジンが片方止まっても母艦や地上基地にたどり着ける確率はかなり高いが、単発ならそうはいかない。筆者は過去何度も米英の空母搭乗勤務経験のあるパイロットに話を聞いたことがあるが、彼らが口を揃えていうのは、単発機で洋上を飛行することはエンジントラブルを考えると非常に大きなプレッシャーを受けるということだ。

 中国が5隻の空母を一挙に投入しても米空母1隻の戦力には遠く及ばない。中期的には、中国の空母は日米同盟にとって大きな脅威となりえないだろう。

 このような空母部隊の整備に軍事予算を投じるのは一種の浪費であるといってよい。

 ではまったく中国の空母が脅威ではないかといえば、そうとも言えない。 ・・・ログインして読む
(残り:約2499文字/本文:約3160文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

清谷信一の記事

もっと見る