メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

アラブ世界が誇るアラブ系スティーブ・ジョブズ

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 スティーブ・ジョブズの生物学的な父親はシリア出身のアブドルファッタ・ジャンダーリーである。1931年にシリアで3番目に大きな都市ホムスに生まれている。ホムスは、シリアの首都ダマスカスの北160キロに位置している。現在アサド政権に反対する運動に揺れている都市である。

 ジャンダーリーの父親は、教育はなかったが才覚で財産を築いた人物であった。息子の教育に熱心で、中東では最高峰の大学とされるレバノンのアメリカン・ベイルート大学にジャンダーリーを進学させた。ここでは学生組織のリーダーとしてアラブ民族主義の高まる時代を経験している。同級生にはPFLP(パレスチ解放人民戦線)を組織したジョージ・ハバシュなどがいた。

 ジャンダーリーは、大学を卒業後、アメリカに渡りウィスコンシン大学で政治学の修士号と博士号を獲得した。そこで勉強中にジョアンヌ・キャロル・シーベルという女性と恋に落ちた。二人の間に男の子が生まれた。

スティーブ・ジョブズ=2010年10月撮影

 しかし、シーベルの父親は保守的であり、娘のアラブ人との結婚に反対した。男の子は、

・・・ログインして読む
(残り:約672文字/本文:約1117文字)