メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

シャルル・ド・ゴールが示した「財政再建」への教訓

櫻田淳 東洋学園大学教授

 シャルル・ド・ゴールは、フランスの「救国の英雄」として語られた政治指導者である。独自の核武装の断行やNATO(北大西洋条約機構)軍事部門からの脱退といった政策対応は、その執政期においてですら「将軍」と呼ばれたド・ゴールの志向を強く印象付けている。

フランスのド・ゴール元大統領(1890~1970)

 しかし、ド・ゴールがその執政に際して何よりも留意していたのは、「経済」の再建であった。一九五八年、彼が政界に復帰した直後、フランスの財政は、対外債務と歳入欠陥が重なり破綻寸前の状態に追い込まれていた。ド・ゴールが一貫して追求した「フランスの偉大さ」は、盤石な「経済」によってこそ担保されるものであった。

 ド・ゴールが往時のフランスの財政破綻を回避するために採った対応は、次に挙げる三つの骨子に則っていた。

(1)歳入の拡張と歳出の抑制

(2)通貨の安定

(3)自由貿易の推進

 これは、誠に平凡な骨子である。具体的に採られたのは、次のようなものである。

(1)個人所得・法人、奢侈品への課税強化。酒、煙草への課税強化、公共料金の値上げ、公務員・公職者給与の引上げ凍結。軍人恩給支払中止、社会保障会計への補助金削減

(2)新通貨フランの発行と通貨価値の防衛

(3)「欧州統合」の推進、「市場」の確保を趣旨とした自由貿易の推進

 ド・ゴールは、こうした三つの骨子の施策を並行させて断行した。加えて、確認されるべきは、

・・・ログインして読む
(残り:約1217文字/本文:約1790文字)