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米国は、若者の雇用のためにTPP=保護主義を進める

佐藤優 作家、元外務省主任分析官

 グローバリゼーションが進む中で、米国はもっとも有利な立場にあるはずだ。それにもかかわらず格差に抗議する若者のデモが大学生にまで波及した。米国においても深刻な格差が生じているのだ。

 米国の大学の学費は高い。学費が文科系で年額4万ドル(約310万円)もする。これに生活費が切り詰めても年2万ドル(約155万円)くらいかかる。しかも宿題が多く試験も厳しいので、アルバイトで学費と生活費を稼ぎながら勉強することは不可能だ。確かに米国では奨学金が充実しているが、大学生全員が受けられるわけではない。多くの学生が4年間で2000万円近くのローンを抱えている。しかも就職が容易でない。

学生たちに先駆け、労働者たちは以前からウォール街で「ゴールドマン・サックスの牙を抜け」「高額ボーナスではなく我々に仕事を」と訴えていた=2010年4月

 米国の大学事情に詳しい佐々木紀彦氏が著書『米国製エリートは本当にすごいのか?』(東洋経済新報社、2011年)で<たとえばハーバード大学では、就職活動をしている学生のうち、卒業までに就職先が決まった学生は二〇一〇年で七三%にすぎません。リーマンショックの影響をもろにうけた二〇〇九年にいたっては、わずか五八%でした。>(44頁)と記す。就職ができなくてもローンの返済に迫られる。行き場のない怒りがデモという形で爆発しているのだ。

 なぜ、大学生新卒者の就職難が生じるのか。

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