春名幹男
2011年10月13日
若者たちの行動が始まったのは9月17日。その2日後の大統領はまだ、いつもの大統領だった。富裕層や大企業への増税案を「階級闘争」(ベイナー下院議長)と非難されたことについて、「階級闘争ではない、数学だ」と答えていたのである。
確かに、財政赤字は膨張する一方だから高所得者に高負担を求める、という単純な計算だ。しかし、そんな言い方では大統領の意志が全く分からない。彼は、2009年1月の大統領就任以来、こうした説明を繰り返してきた。
「無保険状態の約4700万人を救済する」と訴えて実行した医療保険改革も最後は議会内の協議に任せた。大型の景気対策法も米金融規制改革法も野党共和党の反対を抑えるため妥協を重ねた。しかし、14兆ドルもの財政赤字を積み上げても、失業率は9%台に高止まりし、中間層を直撃。大学を出ても就職先はなく、若者たちが町にあふれた。
支持率は40%台に落ちたまま、与党民主党内に来年の大統領で「オバマ再選は難しい」という声が上がり始めた矢先のことだった。
大統領の演説がはっきりと変化したのは9月22日のオハイオ州での演説だといわれる。シャツの袖をまくり上げ、腕を振り回して「私は中産階級の戦士だ」と訴えた。3年前の大統領選をほうふつとさせた。
オバマ氏は選挙の顔と現職大統領の表情が全く違う。後者はハーバード大ロースクール出のエリートのそれである。
しかし、
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