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[10]再び、震災と鉄道を考える(下)――沿線の成り立ちを知ってから住むところを決めよう

聞き手=WEBRONZA編集部

原武史さんインタビュー 聞き手=WEBRONZA編集部

◆植民地も島は狭軌、大陸は標準軌◆

――連続インタビューで何度か触れた標準軌と狭軌の違いは、どう考えればいいんでしょうか。もちろん、レール幅が広い方が大きな車両を高速で走らせることができる。それ以外に先進国のイメージだとか、あるいは世界標準なので鉄道インフラを売り込む際のコスト面も有利なのでしょうか。

 日本の鉄道は、JRの在来線や東急、東武、西武、小田急、相鉄、名鉄、南海、西鉄などの私鉄が狭軌で、新幹線が標準軌です。でも、標準軌の私鉄も阪急や阪神、京阪など、関西を中心にいくつかあります。関東でも、京急や京成は標準軌。他にも、狭軌と標準軌の中間にあたる1372ミリという中途半端な京王線の古い車両が、狭軌に当たる山梨の富士急行線や島根の一畑電鉄で余生を送っています。つまり線路幅が違っても、車両を改造すれば別の線で走らせることができるわけです。

――軌間が混在している問題は、電力会社の送電網が、50キロヘルツと60キロヘルツで東西に分断されて統一できない状態と似ていないでしょうか。

 明治初期に、大隈重信が英国人技師のアドバイスを鵜呑みにする形で、狭軌を採用しました。英国側から見れば植民地サイズでいいじゃないか、と馬鹿にしていたわけです。1067ミリで敷設した新橋~横浜間以来、ずっと狭軌でした。だから、前にも触れたように近代化が進んでくると、後藤新平と原敬の対立が生まれた。つまり、大陸につながる東京~下関間をすぐに広軌化すべきだ、いや、地方のローカル線を充実させるべきだ、という論争です。結局、原敬の率いる政友会が勝ってローカル線の延伸を優先させた。鉄道広軌化計画はいったん挫折して、戦後の東海道新幹線でようやく実現したわけです。

 ところが、

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