2011年10月18日
坂本義和先生(注1)、大変ご無沙汰しております。大学時代や海外留学の際にも色々とお世話になったにもかかわらず、長らくご連絡もせず申し訳ございませんでした。
留学後関わった仕事が、政策や政策現場に近いところで、何となくアカデミックな場から遠く、距離感を感じておりまして、ご連絡するきっかけもつかめず失礼いたしました。
本状を書かせていただいていますのは、先生が最近出版された『人間と国家(上・下)――ある政治学徒の回想』(注2)を読ませていただき、大いに感銘を受けたからです。
先生は、海外で生まれ、中国で幼少期を過ごされ、幼い時から、国や社会の多くの問題点や困難に直面し、特に国家への不信感をもたれて成長されてこられました。他方、国や民族などを超えて、他者への愛や思いをもつご両親のもと、戦争時の現実の中でも、人間そして市民への愛と期待を育まれ、最後には市民社会こそが歴史を動かすものなのだと確信されるようになられたのですね。坂本先生のお考えのベースには、家族や人間への愛があるのではないかと感じました。
先生の思いと人生が素晴らしいのは、先生ご自身の生い立ちや人生と国際政治学者としての思索と理論を一体化させて、学績を重ねられたことだと思います。しかも、その学問的知見を、単に机上の論に終わらせることなく、言論やご自身の主張に基づく社会運動に結び付けて、戦後のリベラル派、革新派の社会的な中心を担われ、日本社会に貢献されてきたことでしょう。だからこそ、先生の議論には、説得力と力があったのだと、改めて感じました。
坂本先生のご本を読ませていただいて、日本でも言論が社会的な問題提起をし、論争を巻き起こし、日本の知識人や学界、政界などが真剣に考え、議論をしていた時期があったのを改めて思い出しました。
昨今の日本の言論界は、表層的で、
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