メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

【欧州エネルギー事情】 ドイツ編(6)――新しい文明の姿

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

●核兵器も原発も「ノー」

 倫理委員会の報告書は、第10章以降で、原発の持つ根本的な問題に再び立ちかえっている。それは原子力エネルギーを使った核兵器の拡散と原発利用との関係だ。

 IAEA(国際原子力機関)によると、世界には原発が435基あり、エネルギーの約15%を供給している。2030年までに原発の数は倍増するとの見通しもある。報告書は「この見通しは、多くの人々にとっては心配なことだ」と記す。

 テロリストの攻撃や「破綻国家」の増加など、世界は安心できる状況からはほど遠い。核兵器やミサイルを身勝手に開発する国が現れ、核物質を奪われるといった危険性も消えない。中国など新興国を中心に原発が次々と新設され、核物質の量が増えれば、犯罪に巻き込まれるリスクも増えていく。

 「核の拡散を抑え、コントロールする努力は限られた効果しか生んでいない。拡散を防ぐ取り組みは効果的だとはいえない」。報告書はそう記した後、強い調子でこう宣言している。

 「核物質の拡散を完璧に防ぐためには、その物質がまったく作られないようにし、さらに他のエネルギー源と代替しなければならない」

 として、核兵器も原発も、両方ともこの世から追い出すべきだという。日本と同様に戦後長く核兵器反対の運動をしてきた、反核世論の強いドイツらしいメッセージである。

 「核のゴミ」を廃棄する直接処分場についての倫理委の見解も明確だ。

 「脱原発であろうがなかろうが、運転期間がどれだけになろうが、原発の廃棄物の最終処分の問題は解決されなければならない。それは大きな倫理的な義務である」

 ドイツでは原発廃棄物の直接処分場の建設をめぐって、住民の激しい反対運動が起きている。中部ゴルレーベンの地下深くに実験施設があるが、処分場の建設はまだ難航している。高レベル放射性物質の処分場建設は、将来の世代に影響が及びかねず、テロや自然災害のリスクもないわけではない。

 報告書は、「潜在的なリスクをわずかなりとも減らす努力をしなければならない」とする一方、現状では、 ・・・ログインして読む
(残り:約2648文字/本文:約3496文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

脇阪紀行の記事

もっと見る