2011年10月31日
しかし大量破壊兵器は見つからなかった。しかもイラクでは10万以上の人命が失われた。またアメリカも途方もない戦費を注ぎ込み、多数の若者を失った。同国は、財政赤字に苦しみ、威信を傷つけられた。どこから見てもイラク戦争は愚かな戦争であった。アメリカの有権者の多くは、この解釈を支持してオバマに投票した。オバマの当選によって、アメリカ国民によるイラク戦争に関する評価は既に定まった。そして歴史的な評価さえも既に決したかの観がある。戦争は失敗であった。
だが、そう簡単に割り切ってもよいのだろうか。フセイン大統領の長男ウダイの影武者であったラティーフ・ヤヒアの回顧録『悪魔の影武者(Devil's Double)』の投げかける疑問である。この本は、1990年代にドイツで出版された。そしてイラク戦争開戦の年の2003年に英語圏でも出版された。ちなみに邦訳は、まだのようである。
この本に基づいた映画が、この夏からアメリカで公開され再び話題を集めている。この映画の予告編をインターネット上で見ることができる。なお日本では未公開である。主演はドミニク・クーパーで、ウダイと影武者のヤヒアの二役を演じている。監督は2002年のボンド映画『007/ダイ・アナザー・デイ』でメガホンを取ったリー・タマホリである。
ウダイの高校の同級生だったヤヒアは容貌が似ていることから、拷問を受け、無理やりに影武者にさせられてしまう。
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