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 世論を二分した環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への日本の参加問題。次は、「影の主役」中国も絡んだ駆け引きも焦点になる。

 TPP交渉参加で対中関係をどうするのか、日本はこれまで真剣に検討してこなかった。日本の貿易相手国1位は、2004年に米国から中国にとって代わって以後、日中貿易額と日米貿易額の差が拡大している。長年対中貿易に携わってきた元大手商社役員は「中国の反発が心配だ」と不安を口にしている。

 日本がこれまでのTPP論議で、対中関係よりも対米関係に配慮してきたのは、日米同盟関係を第一に優先しているからだ。

 短期的には、来年の米大統領選挙に向けて、「輸出倍増戦略」を掲げるオバマ米大統領を支援する効果がある。日本は、交渉参加に向けた協議入り表明をアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議開催前に設定せざるを得ない状況に迫られたのはそのためだ。

 APECでの日米首脳会談後、オバマ大統領は野田佳彦首相自身が「すべての品目を自由化交渉対象とする」と表明した、と早とちりして、「歓迎」と発表する一幕もあった。

 中長期的には、日本を含めると10カ国になるTPPという「メンバーズクラブ」内で自由貿易を浸透させることによって、中国をけん制し、中国の不公正な貿易慣行の改革を促す狙いが米国にはある。APEC首脳会議に先立ち、オバマ大統領は改めて、「中国はルールを守るべきだ」と強調した。

 APECでは、「招待されていない」(兪建華商務次官補)と不満を漏らすと、「全ての国に門戸が開かれており、招待を待つ必要はない」とカーク米通商代表が応じ、心理戦を表面化させた。米国は中国市場の自由開放を求めているが、中国は内政改革につながる自由化を受け入れる意思はないのだ。

 他方、日本はこれまで日中韓とも、自由貿易協定(FTA)に向けて共同研究を行うことで合意している。しかし、韓国は既に米韓FTAを先行させているため問題はないが、日本が日中韓FTAを先行させれば、鳩山由紀夫元首相の「東アジア共同体構想」と同様、米国が強く反発するのは必至だ。

 米国は

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筆者

春名幹男

春名幹男(はるな・みきお) 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

1946年京都市生まれ。大阪外国語大学卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局、ワシントン支局長。名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授をへて、現在、早稲田大学客員教授。ボーン・上田記念国際記者賞・日本記者クラブ賞受賞。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『秘密のファイル―CIAの対日工作』(共同通信社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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