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【欧州エネルギー事情】 ドイツ編(7)――脱原発決定から半年、電力会社も脱原発

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 福島第一原発事故の後、ドイツが脱原発路線に回帰してから半年余り。この間の政府倫理委員会を舞台にした論戦を前回まで紹介してきたが、現時点でのドイツ国内はどんな雰囲気なのか。10月中旬、ドイツを再訪し、官界や産業界、自然エネルギー関係者にインタビューした。その内容を報告したい。

 今回のドイツ訪問を前に抱いた関心は以下の三つの点だ。

(1)福島の事故直後、ドイツ各地で反原発デモが起き、原発閉鎖を求めた。メルケル政権は2022年までの脱原発を決めたが、半年たって冷静な空気が戻ってきたならば、原子力産業はもちろん、産業界や経済官庁が再び、原発の必要性を論じ始めているのではないか。

(2)政府の倫理委員会は、脱原発のための代替エネルギー開発の重要性を指摘していたが、再生可能な自然エネルギーの普及は実際にどうなっているのか。何が問題点なのか。

(3)「原発閉鎖によって隣国フランスなどからの輸入に頼るだけ」という批判にドイツはどう答え、どう対応しようとしているのか。

 国民感情が冷静になれば、再び原発推進論が頭をもたげているのではないか、という第一点目の推測はまったく思い違いだった。

 連邦下院は6月、与党キリスト教民主同盟(CDU)、自由民主党から野党・社会民主党、緑の党まで全政党の支持で、脱原発の方針が承認された。連邦政府の官僚たちから、脱原発の方針に沿った説明を聞くのはその意味で当然だった。日本の経済産業省にあたる連邦経済技術省のヨッヘン・ホマン事務次官からは、原発推進をにおわす言葉は一言もなかった。

 印象に残っているのは、原発業界の声を代表するドイツ原子力産業会議を訪ねた時だ。

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