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撤退後に、帰還兵の本当の戦いが始まる

高橋和夫

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 年末までにイラクからアメリカ軍が撤退を完了する予定である。そのイラクとアフガニスタンからの帰還兵の自殺がアメリカで問題になっている。アメリカ政府の統計では2010年には80分に一人の割合で帰還兵が自殺している。つまり一日平均で18名の自殺者が出ている。年間で6570名である。

来日し、イラク戦争の実態を語るイラク戦争従軍の元米兵=2010年10月、秋田市で

 2001年以来のアフガニスタンとイラクの戦争で、これまでに死亡したアメリカ兵の数は総計で6316名なので、それ以上の数が昨年だけで母国で自殺した計算になる。2010年にイラクとアフガニスタンで死亡したアメリカ兵は440名に過ぎない。戦場で殺されるよりは、結局はアメリカに帰国して自らの命を絶つ確率の方が15倍も高いわけだ。帰還兵の間での薬物中毒やアルコール依存症も少なくない。

 自殺の多さの背景には、

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