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建前では反米、本音では親米のイラン人

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 アメリカ・イラン間では険悪な状況が続いている。だがアメリカの大学ではイラン人の留学生が増え続けている。ニューヨークの国際教育研究所(Institute of International Education)が11月14日に公表したデータによると、アメリカに留学するイラン人学生の数が昨年比で19%の伸びを見せ、現在5626名に達している。これはアメリカへの留学生の数では世界で22位に当たる。ちなみに首位は16万人近い留学生を送り込んでいる中国である。日本は、その8分の1の2万名程度である。

ブッシュ大統領(当時)のかぶり物に靴を投げつけるデモ=2008年12月、テヘラン市の旧米国大使館前

 実はアメリカへの留学生の数で首位だったのは、かつてはイランであった。1973年の第一次石油危機は、産油国にとっては危機ではなく石油収入の増大を意味していた。

 その収入を背景にイランは多数の留学生をアメリカに送った。その数はピーク時には5万人を超えていた。アメリカのどの大学でもイラン人に出会ったものである。王制の時代には、学生数が増えると政治問題化しやすいというのでシャー(王様)が、イラン国内の大学数を抑えていた。そうした背景もあり、豊かになったイラン人たちが奔流のようにアメリカに留学していた。

 しかし1979年のイラン革命そしてテヘランでのアメリカ大使館人質事件などを経て、イラン人留学生の数は激減した。およそ10年後の1999年頃には、1600名程度にまで落ち込んだ。その後、アメリカに留学するイラン人の数が増え始め現在の5000名台にまで戻ってきた。留学生の8割が大学院レベルで学んでおり、大学学部レベルは比較的に少ない。

 この留学生のうちの多くは、結局は帰国せずイランにとっての頭脳流出となっている。特に

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