2011年12月05日
この買い取り価格を論議する「調達価格等算定委員会」の国会人事がもめている。負担増を嫌う産業界の代表が委員長含みで選ばれそうなことが、問題の発端だ。太陽光発電の例をみながら、ドイツの経験を考えてみよう。
●日本を抜いて世界一に
太陽光発電の世界に、ドイツが敢然とその姿を現したのは2000年代に入ってからだ。2000年の再生可能エネルギー法で買い取り制度を強化したことで、人々や企業の投資意欲がかきたてられ、太陽光発電が急速に普及した。2004年、新規設備能力でドイツは日本を追い抜き、一気に世界一に躍り出た。この年から太陽光発電ブームが本格化する。
太陽光発電の新規設備能力を見ると、2003年まで緩やかだった増加のカーブが04年に上昇を始め、08年には年間390万キロワット、09年には同740万キロワットも発電能力が増えた。稼働率を無視して単純比較すれば、原発11基分の発電能力がこの2年間に生まれたことになる。
太陽光発電の普及によって起きたのが、買い取り価格水準の低下である。
買い取り価格の推移をみると、2000年には1キロワット時あたり50ユーロセントを超えていたのがすぐ40セント台に下がった。普及強化を狙った2004年の法改正によって買い取り価格は再び50セント台に引き上げられたが、その後急低下し、2011年には半分近い約28セントまで下げられた。約5年間で半分の水準まで急低下している。
日本での住宅用太陽光発電(10キロワット以上)の買い取り価格(11年度)は1キロワット時あたり40円。1ユーロ=140円で計算すれば日独の買い取り価格はほぼ同じ水準だ。昨今の1ユーロ=100円近辺の円高のレートで計算すれば、ドイツの価格水準は約28円とかなり低くなる。
買い取り価格の引き下げが生産コストの低下を反映しているのは言うまでもない。太陽光パネルの普及と技術開発の進展によって、生産コストも過去5年間で半分の水準に低下したと見ていいだろう。
半導体をはじめとする電子部品生産の歴史が示すように、製品の普及につれて生産コストが急激に下がる構造ができあがった。
●消費者負担の問題
ただ、買い取り価格の引き下げの背景には、もう少し複雑な事情がある。
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