清谷信一
2011年12月20日
航空自衛隊の次期戦闘機(FX)が米空軍も採用するF-35に決定した。F-35は米国防総省がプログラムをキャンセルする可能性があるし、調達コストも不明だ。米国会計検査院(GAO)の高官ですら、F-35のコストは把握できていない。米軍の機関紙である「星条旗新聞」も、発表されていない内部資料を引用し、F-35のテクニカルな深刻なトラブルが多いことを報じている。
防衛省は国内生産をするとしているが、単なる組み立てにしてもかなり制限されるだろう。F-35の開発パートナーには関与のレベルによって、レベル1からレベル3があり、レベル2のパートナーであるイタリアですら重要部分の組み立てはイタリア人立ち入り禁止で、駐在するアメリカ人が行うことになっている。レベル1のパートナーである英国にすら、米国は十分な情報開示をしなかったので、一時期は英国がプログラムから脱退する可能性もあった。
スパイ防止に対する確固たる法律もなく、NATO諸国に比べて機密防止に緩い我が国がイタリア以上の厚遇を受けることはないだろう。国内組み立ての調達単価は輸入の2倍以上になるだろう。単に国内組み立ての主契約企業が儲かるだけで、我々納税者に何のメリットもない。ならば輸入に切り替えてコストを下げるべきだ。
だが、戦闘機の生産基盤が失われても、空自は現在開発を進めている次世代戦闘機の開発プログラムを継続するだろう。関連企業は試作だけでは技術や熟練工を維持できないと主張しているのだが。こうして「軍人の玩具や趣味」の充足のために税金が浪費されていく。
既にF-35の問題点は過去の記事で述べているのでそちらを参照して欲しい。
F-35の採用が我が国の防衛産業崩壊の引き金になりかねない。
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