谷田邦一(たにだ・くにいち) ジャーナリスト、シンクタンク研究員
1959年生まれ。90年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て、2021年5月に退社。現在は未来工学研究所(東京)のシニア研究員(非常勤)。主要国の防衛政策から基地問題、軍用技術まで幅広く外交・防衛問題全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識を生かし、安全保障問題の新しいアプローチ方法を模索中。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
しかし、防衛省内の下馬評通りの結果とはいえ、どうもすっきりしない後味の悪さが残る。大手新聞各社は決定前から社説を掲げ、「欠陥問題を見極め選定を」(産経)、「未完成F35で大丈夫か」(東京)、「選定理由を明確にせよ」(朝日)などと異例の警鐘を鳴らしてきたところである。
この選択で本当によかったのか。F35はカタログ上の性能しかわからない上に、たくさんの不確実性を抱えている。日本の航空機産業が存続の危機にあり、世界の戦闘機開発の潮流が大きく変わりつつある節目にあって、民主党の野田政権は一種の「賭け」に出たのではないかとさえ映る。選択が誤っていたとすれば、しわ寄せはただちに私たち納税者への負担となってのしかかる。それだけに、今回の決定を混迷の始まりととらえる業界関係者や専門家たちも少なくない。
戦闘機と旅客機との違いは、よくレーシングカーと乗用車との違いにたとえられる。カネに糸目をつけず、安全性を犠牲にしてでも、ひたすら性能の高さを追求するのが戦闘機の特徴だ。その目的が国家の防衛であることを考えると、ある程度はやむを得ない面もあるだろう。安くてすぐに手に入る車であってもレースに勝てなければ困るが、チームを破産させるほどカネがかかったり、レースに間に合わないような車を発注したりすることも許されないのは言うまでもない。
国内の航空関係者の間からは、今回の選択は、それほど常識を超えたものという見方が出ている。
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