2011年12月21日
ロシアは北朝鮮に独自の情報ルートと人脈を持っている。平壌で大使館は、隔離された場所にかためられているが、ロシア大使館は市の中心部にある。その関連で、ロシアの外交官は市民の反応について独自情報を取ることが出来る。また、平壌にはロシア国営イタル・タス通信の支局がある。
この通信社は、一般配信と別にロシア政府のために特別の情報収集を行っている。それは赤い用紙に印刷されているので「赤タス」と呼ばれている。「赤タス」は、クレムリン(大統領府)、首相府、SVR(対外諜報庁)などに届けられる。さらに北朝鮮指導部とSVRには協力に関する秘密合意がある。この合意に基づいて、SVRの専門家が定期的に平壌を訪れ、金正日氏の三男で後継者に指名された金正恩氏に国際情勢に関するブリーフィング(説明)を行っている。
余談になるが、筆者はモスクワの日本大使館に勤務している時期、ロシア外務省付属外交団世話部(ウポデカ)を通じ、1993~94年にベラルーシ語の家庭教師をとった。この家庭教師は、モスクワの北朝鮮大使館で金正日氏の息子(誰かは不明)にロシア語を教えていた。そのおかげで、家庭教師から北朝鮮製のクッキーや飴をときどき分けてもらった。甘さがおさえられたおいしい菓子だった。
あるとき、筆者が「北朝鮮のプリンスは、どれくらいロシア語が堪能か」と尋ねると、家庭教師は「読む力はかなりある。ただし、日常的にロシア人と付き合っていないので、会話はなかなか上達しない」と述べていた。定期的にモスクワにやってきて、ロシア語の特訓を受けているようだった。
また、当時、日本航空の支店長が住んでいるアパートに金正日氏の成恵琳氏(二番目の妻、金正男氏の長男)も住んでいた。成恵琳氏の受け入れは、当初ソ連共産党中央委員会国際部が行っていたが、ソ連崩壊後はロシア科学アカデミー傘下の某研究所が行っていた。この受け入れ責任者である研究者と筆者は親しくしていた。この研究者は、金日成氏、金正日氏の双方から個人的に北朝鮮に招待された経験を持ち、北朝鮮情勢に関する生き字引のような人物だった。日本政府がモスクワで本気になって北朝鮮情報を収集すれば、かなりの成果があがる。是非試して欲しい。
さて、国営ラジオ「ロシアの声(VOR)」が、金正日氏の死去が発表になった数時間後に放送したイーゴリ・デニソフ名の「金正日氏死後の北朝鮮情勢 露専門家の見解」と題する論評が興味深い。
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