メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

防衛産業は緩慢な死を迎える

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 防衛費はこの10年ほど横ばいだ。だが、装備調達費は大きく減じている。1990年には1兆727億円だった主要装備の調達予算は2010年には6837億円と3割以上も下落している。これは燃料費の高騰、人件費などの高騰も原因だが、最も大きいのは装備の高度化による維持整備費の上昇である(「防衛生産・技術基盤の維持・育成に向けた防衛省の取組み」<防衛省>3ページ以降を参照 http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/seisan/sonota/pdf/01/001.pdf)。

 装備調達予算の減少に対して維持整備予算は1990年が4769億円だったものが2005年には金額で装備調達費を追い抜き、2010年では7923億円と約8割も膨れあがっている。

 また装備の高度化=高額化に伴って各装備の調達数は減る傾向にある。従来から防衛装備調達数は毎年少量の調達を続けてきた。このため調達コストが上がり、なおさら調達単価が上がるという悪循環を起こしてきた。

 例えば89式小銃は旧式化した64式小銃の後継だが、1丁あたり30万円以上かかり、先進諸国の小銃に比べても概ね4~6倍ほど高く、このため20年経っても更新が完了していない。部隊では教育、兵站が二重に必要でありコストがかかる。のみならず相互の弾薬に互換性もないので、有事になれば不利である。

 これはメーカーにとってもいいことではない。いつまでも古い装備のパーツの生産を行わなくてはならない。つまりそのための機械や従業員が拘束される。例えば1種類の小銃で年間1000個必要な部品があるとしよう。小銃が2種類ならばそれぞれ500個が必要となり、1種類に比べて生産効率は半分に落ちる。

拡大福島第一原発のがれき除去に投入された陸上自衛隊74式戦車=陸上幕僚監部提供

 陸上自衛隊は新型の10式戦車を導入、2012年度から配備が始まる。このため74式、90式、10式と3世代の戦車が存在することになる。90式と10式は120ミリ滑腔砲を使用しているが、10式用の新型砲はより強力な新型徹甲弾を使用する。この弾薬は90式の主砲では使用出来ない。部品はもちろん乗員の訓練は小銃とは比べ物にならないくらい多額の費用がかかる。対して欧米先進国では大抵1種類だ。しかも新型戦車を開発するのではなく、既存の戦車の改良で凌いでいる。 

 そもそも我が国本土で大規模な戦車戦が起こりうる可能性はない。周辺諸国にそのような揚陸能力を持った国はない。また仮面ライダーの「ショッカー」やレインボーマンの ・・・ログインして読む
(残り:約1497文字/本文:約2536文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

清谷信一の記事

もっと見る