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【欧州エネルギー事情】 ドイツ編(最終回)――分権型エネルギー社会への躍動

脇阪紀行 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

 脱原発へと踏み出したドイツで、原発に代わるさまざまな再生可能エネルギーの普及に大きな役割を果たしているのが、州や市、町といった地方自治体だ。連邦制の下で分権型社会の基盤となる地方自治体の中には、風力、太陽光発電の普及や家庭での省エネを市民に促すだけでなく、自らの発電事業を拡大させ、巨大電力会社への依存から脱却する姿勢を見せる市も現われている。

 ドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州の都市で1990年まで首都だったボン。人口31万余りの市民への電気とガス、水道やバス交通など多くのサービスを担う市公社のエネルギー・水道部門を2011年12月に訪ねた。日本も水道やバス事業を経営している自治体はあるが、ドイツでは電気やガスまで取り組んでいる地方自治体が少なくない。

 もちろん株式会社ではなく、地方自治体が100%所有する。利益が出れば自治体のもうけになるし、損失が出れば自治体の負担になる。電力供給については公社が独占しているわけではなく、市の電力需要の1~2割を公社が満たしているにすぎない。

 このボン市がいま取り組んでいるのが、電力事業、とりわけ再生可能エネルギー事業の拡大だ。

 ペーター・ベッケンブロック社長は「発電によって利益を出し、CO2の排出量も減らす。ボン独自のエネルギー改革を実現すれば、巨大な電力会社に依存しなくてもいいようになる」と話した。公社が独自に方針を決め、市や市議会に報告し、了承を得たという。

 その具体策としては3つの方策を立てている。

 第一は、北海に建設中のオフショア風力発電へのプロジェクト、トリアネル・ウィンドパーク・ボルクムへの投資計画だ。トリアネル地域に2013年完成予定の風力発電に、他の30前後の自治体とともに総投資額の30%にあたる約3億ユーロを投入する。脱原発を進める政府の方針によって、オフショア風力発電で生まれる電気は、固定価格による買い取りの対象になる。それを見越せば、投資として十分成り立つとの判断だ。

 第二は、市内を走る配電線を所有する電力大手RWE社からの配電線買い戻し計画だ。 ・・・ログインして読む
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筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

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