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ディズニーランドと覚醒剤――金正恩ロイヤルファミリーの日本暗黒コネクション

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 なぜディズニーランドなのかはわからないが、とにかく北朝鮮のロイヤルファミリーは東京ディズニーランドが大好きなのである。まるで、国交のない日本に堂々とやって来て、そこで遊んでみせるのが北朝鮮「王族」のステータスでもあるかのようだ。

 2001年春、ドミニカの偽造旅券で成田空港から入国しようとして、金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男・金正男(ジョンナム)氏が逮捕された。小さな子供と女性(北朝鮮国営の航空会社・高麗民航社長の娘という)を連れて日本に来た彼は、取り調べに対し、「東京ディズニーランドに行きたかった」と答えた。

来日したときの金正男氏=2001年5月4日、成田空港

 事件は国外追放という形でケリがついたが、これがきっかけとなり、正男氏は金総書記の不信を買い、後継者レースから脱落したといわれている。

 そして2011年12月、金総書記の死亡を受け、28歳にして金王朝3代目、北朝鮮絶対権力者の地位に上ることになった三男・正恩(ジョンウン)氏。正男氏の腹違いの弟である彼もまた、子供の頃、兄の正哲(ジョンチョル)氏と一緒に東京ディズニーランドに遊びに来ていたのだ。

 「正恩は1991年春、他人名義のブラジル旅券を使って日本に極秘入国し、東京ディズニーランドで遊んだようだ。旅券名義は『ジョセフ・パク』。旅券での年齢は8歳。兄の正哲は9歳とされていた。滞在期間は10日間ほどだった」

 3代目の「王」となった正恩氏をめぐる報道が乱れ飛ぶ中、新聞やテレビは公安当局の情報として、兄弟のディズニーランド遊びをこう報じた。

 さて、ここからが話の本題である。筆者が事情に詳しい関係者から聞いたところでは、この時、東京ディズニーランドを訪ねたのは、実は幼い兄弟2人だけではなかった。金総書記の妻で兄弟の母、高英姫(コ・ヨンヒ)夫人も一緒だったのだ。

 高英姫夫人は、済州島から戦前大阪に来た在日朝鮮人の娘として生まれ(当時の名前は高ヨンジャとみられる)、1959年から始まった在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業で家族とともに北に渡った。金総書記の肝いりで作られた芸術団「万寿台歌劇団」に入団、美貌が金総書記の目に留まり、「奥の院」のひととなった。正哲、正恩兄弟と娘一人を生み、独裁者の妻として「陰の権勢」を振るったが、2004年に癌で死亡している。

 彼女の入国は、息子2人とは別だったようだ。関係者は語る。

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