メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ホワイトハウスへはトラックに乗って――サントラム候補の善戦

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 まだ日本では参賀日の3日に行われたアメリカ中西部アイオワ州の共和党の党員集会での投票結果が出た。この投票をもって、今年11月の大統領選挙への長いレースがスタートした。勝ったのは元マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー候補であった。しかし、2位のリック・サントラム元上院議員とはわずか8票差であった。

 本命とされるロムニーは勝ったというよりは、負けなかっただけという結果である。逆に2位のサントラムにとっては、最近までは泡沫候補視されていただけに、負けたのだが、勝ったも同然の「負け」であった。

 数字を詳しく見ると総投票数は12万2255票であった。このうちロムニーは、約四分の一にあたる3万15票を獲得した。サントラムは3万7票であった。繰り返しになるが、わずか8票差であった。4年前にも共和党の予備選に出馬し、アイオワで2位につけたロムニーは、それ以来、資金を集め組織を固めてきた。

支持者に演説するサントラム元上院議員=2012年1月4日、アイオワ州ジョンストン

 それに比べるとダークホースとして出馬したサントラムには金も知名度も組織もなかった。日本の政治用語を使えば、カバン、看板、地盤のいずれでも劣っている。そのサントラムが、8票差までロムニーを追い詰めた。

 ある専門家の計算によれば、アイオワでの1票のためにロムニーが使った資金は、113ドルになるという。対するサントラムは1ドル65セントしか使っていない。同候補は、庶民的な姿をアッピールして選挙を戦った。それは同時に、資金不足からの必要に迫られた作戦であった。

 その手段として使ったのが、トラックによる遊説である。

・・・ログインして読む
(残り:約1256文字/本文:約1906文字)