2012年01月10日
ただしこの路線変更が一体どのような意味をもつのか、直接の当事者である国内の防衛産業をはじめどれだけの関係者に理解されているのかは疑問である。政府の本当のねらいを知れば、とても「もろ手を挙げて歓迎」などといった甘い言葉を吐けない怖さと厳しさが見えてくる。
結論から先に述べれば、戦後、政府の庇護のもとに市場と利益を保証され、ぬるま湯の「殿様商売」に甘んじてきた防衛産業に対し、政府みずからがその背中を突き、生き馬の目を抜く国際社会の荒海へと押し出そうとしている構図に近い。
今回の緩和がうまくいくかどうかの責任を、政府が、防衛産業の側に押しつけたと言っても過言ではないだろう。善意に解釈したとしても、これは政府が企業に与えた初歩的な試練(親心?)のようなものではないか、と筆者は考えている。
戦闘機や戦車から衣類に至るまで、自衛隊が購入する装備品の総額は年間で約2兆円にのぼる。国内の工業生産総額全体に占める割合でいえばわずか約0.6%だが、その市場をめぐり、例えば護衛艦なら約2500社、戦闘機なら約1200社が限られたパイを分け合っている。
日本の防衛産業の特徴は、欧米と違い、防衛だけに絞った専業が、一部の中小を除いてほとんどないことにある。三菱重工業や川崎重工業などの大手では、民生部門(民需)と防衛部門(防需)の双方をかかえ、両者のバランスの上に経営が成り立っている。しかも防需への依存率は10%前後にすぎない。
こうした特徴ができあがった背景には、むろん日本がとってきた防衛政策の影響が大きい。歴代の自民党政権は、専守防衛を掲げて自衛隊のもつ戦力を抑制的なものにとどめる一方、1967年に佐藤内閣による武器輸出三原則、76年に三木内閣による同原則の強化を通じ、厳格な武器輸出管理を貫いてきた。当時は、平和国家としてのイメージ作りに必要な努力だったといえよう。
その結果、なにが起きたか。
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