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消費増税を決断した野田首相に退路はない

後藤謙次

後藤謙次 後藤謙次(フリーの政治コラムニスト、共同通信客員論説委員)

 2011年9月に発足した野田佳彦政権にはひ弱なイメージが付きまとった。「党内融和と安全運転」を最優先し、野田首相が何をやろうとしているのかが一向に見えてこなかったからだ。

 たしかに鳩山由紀夫、菅直人という2人の民主党首相は持ち味が違ったとはいえ、同じように「未熟な政治主導」を振りかざし、個人プレーに走ってやがて自滅の道をたどった。その反省から野田首相が「ノーサイド」を宣言してチームプレー重視の政権運営を心掛けたことも理解できる。しかし、チームプレーへの過度な重心の移動が野田首相の存在感喪失につながったことも否定できない。

 もともと野田首相は消費税増税を掲げて民主党代表選を勝ち抜いた稀有な存在だった。ところが、いざ首相に就任すると、「不退転の決意」という勇ましい言葉とは裏腹に、腰の引けた政権運営が続いた。発足当初の「どじょう人気」は影を潜め、内閣支持率は低落の一途。「唄を忘れたカナリア」ならぬ、「原点を忘れたどじょう」では国民世論が離れていくのは当然の帰結と言ってよかった。

 消費税増税のような重く、困難な政策目標を実現するためには欠くことのできない2つの要素が必要だ。「覚悟と周到な準備」である。

 とりわけリーダーに覚悟がなければ推進力は生まれない。戦後の首相として初めて大型間接税の導入を試みた大平正芳の覚悟は三木内閣の蔵相として決定した2兆円の赤字国債発行への自責の念から生まれた。大平は赤字国債発行を「万死に値するもの」と語っていた。その大平内閣で蔵相を務めた竹下登は消費税導入を自らの宿命と位置付け、10年の歳月をかけて周到に準備を重ね、実現に漕ぎ着けている。

 ようやくと言っていいかもしれない。

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