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野田佳彦における「正心誠意」の空洞

櫻田淳 東洋学園大学教授

 野田佳彦(内閣総理大臣)には、その政権運営に必要な「体力」が、どれだけ残されているか。政権運営に際しての「体力」の指標の一つは、内閣支持率であるけれども、直近の世論調査の結果が示すのは、その「体力」の回復が内閣改造を経ても図られなかったということである。

 野田における政治上の逆境は、彼が政策の一枚看板として掲げる「税と社会保障の一体改革」に対する世の反応が、誠に冷淡である事情に反映されている。特に、野田における消費増税への志向は、総じて世に受け容れられていない。

 世の最も直近の雰囲気を示す『毎日新聞』世論調査(一月二十一、二十二両日実施)の結果に拠れば、消費税率を二〇一四年四月と翌年十月に段階的に一〇パーセントに引き上げる素案に関して、「反対」層が六〇パーセント、「賛成」層が三七パーセントとなっている。

 こうした逆境を招いているのは、消費増税を打ち出す野田の姿勢が、誠に一本調子なものであり、それ故にこそ政治上の「賢明さ」を醸し出すものではないということにある。野田の姿は、「人参が嫌いな子供に、料理の工夫もせず、無理強いして食わせようとする母親」に喩えることができよう。

 この母親における「無理強い」の印象が強まれば強まるほど、子供は強い拒絶反応を示すようになるのと同様に、野田が「増税」志向で熱意を示せば示すほど、それを受け容れようという世の気運が萎えてくる。現下の逆風は、消費増税という一つの政策に対する逆風ではなく、「野田佳彦、ひいては民主党が手掛けようとすること」に対する逆風なのである。

 野田における「工夫」の欠如は、野党との関係に最も鮮明に表れている。民主党内に厄介な「反対派」を抱え込んだ上で既に不支持率が支持率を上回り、衆参「ねじれ」構造が続く現下の情勢は、客観的には野田の政権運営における「劣勢」を示しているにもかかわらず、野田や彼の周辺から聞こえてくるのは、彼らが依然として政局の主導権を握っていると錯覚しているかのような言動である。

 加えて、野田は、総理就任直後の所信表明演説で、勝海舟が『大学』に拠って語った「正心誠意」の言葉を引用し、その執政への決意を語っていたけれども、過去四ヵ月の執政の実態は、その「正心誠意」が実を伴ったものではないことを暗に示している。 ・・・ログインして読む
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筆者

櫻田淳

櫻田淳(さくらだ・じゅん) 東洋学園大学教授

1965年宮城県生まれ。北海道大法学部卒、東京大大学院法学政治学研究科修士課程修了。衆議院議員政策担当秘書などを経て現職。専門は国際政治学、安全保障。1996年第1回読売論壇新人賞・最優秀賞受賞。2001年第1回正論新風賞受賞。著書に『国家への意志』(中公叢書)、『「常識」としての保守主義』(新潮新書)など。

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