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挑発するイスラエル、耐えるイラン、戦争を恐れるアメリカ

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 1月11日、イランで核開発にかかわっている専門家が暗殺された。一部ではイスラエルと欧米の諜報機関が合同で暗殺したとの見方もあるようだ。事実、1月11日の暗殺に関しては、イラン政府はアメリカ、イギリス、イスラエルを非難した。

 だがイスラエルの単独犯行との解釈も可能である。1月11日の暗殺の直後にホワイト・ハウスのスポークスマンがアメリカの関与を否定した。またクリントン国務長官自身も関与を強く否定した。さらには、その他の暗殺についても関与を否定した。認めるはずもない、との見方もあるだろう。だが、わざわざ国務長官自らが否定する必要があるだろうか。演技にしては、あまりにも熱のこもった否定ではないだろうか。

拡大空港のロビーで、暗殺された科学者の写真などを掲げて抗議する若者たち=2012年1月29日、イランのテヘランで

 しかもタイミングからすると、欧米の関与は想像しにくい。1月21日にイスタンブールでイランの核開発をめぐる同国とP5+1との協議が予定されていたからである。P5とは安保理常任理事国5カ国である。プラス1は、歴史的にイランと関係の深いドイツである。この6カ国をP5+1と呼ぶ。

 また1月末にはIAEA(国際原子力機関)のハイレベルの調査団がイランの招待で同国を訪問する予定も組まれていた。このような時期に欧米が暗殺を実行するだろうか。

 欧米の関与に否定的な見方をするさらに大きな根拠は、欧米でイランとの戦争を望んでいる国は存在しないという事実である。戦争が起これば、石油価格は天井を抜けるだろう。それは世界の景気への大きな打撃となろう。EUは、ユーロの生き残りをかけて危機の連鎖に対応している最中である。また石油価格の高騰は大統領選挙を前にしたオバマ政権も避けたいシナリオである。こうした状況で、欧米の諜報機関によるイラン人専門家の暗殺が起こりえるだろうか。しかも、この時期に。

 それでは欧米が関与していないとすると、誰が残るだろうか。

 イスラエルである。イスラエルはイラン核問題の平和的な解決を望んでいないのだろうか。イスラエルが、平和的な解決を望んでいないわけではない。しかし同国は、平和的な解決を不可能だと見ている。これまでの欧米の交渉姿勢からは、なんらかの形でのイランによるウラン濃縮の継続を認める可能性が見て取れる。

 しかし、

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筆者

高橋和夫

高橋和夫(たかはし・かずお) 放送大学教養学部教授(国際政治)

北九州市出身、放送大学教養学部教授(中東研究、国際政治)。1974年、大阪外国語大学ペルシャ語科卒。1976年、米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『アメリカとパレスチナ問題』(角川書店)など多数。ツイッター https://twitter.com/kazuotakahashi ブログhttp://ameblo.jp/t-kazuo 

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