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在沖米海兵隊のグアム先行移転問題は、日本の国家統合の観点から考えるべきだ

佐藤優 作家、元外務省主任分析官

 2月8日、日米両国政府は、米軍再編見直しに関する基本方針を発表した。朝日新聞の報道を引用しておく。

<普天間の辺野古移設を堅持 米軍再編見直し政府方針発表

 日米両政府は8日、在日米軍再編見直しに関する基本方針を発表した。沖縄の海兵隊のグアム移転と米軍嘉手納基地以南の米軍5施設の返還を先行させ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設から切り離す方針を明記。野田政権は今年6月にも予定していた普天間飛行場の県内移設に向けた埋め立て申請を先送りする。

 両政府は今後、普天間移設とグアム移転、嘉手納以南の施設返還をパッケージとしていた2006年の在日米軍再編のロードマップの見直しに入る。玄葉光一郎外相は8日の記者会見で「数カ月かけて日米間で精力的に協議を行い、結果をとりまとめたい」と述べ、今春の日米首脳会談で新ロードマップの最終合意を目指す意向を表明した。 

 基本方針では、普天間飛行場の移設先について、日米が合意している名護市辺野古への移転が「日米両国が唯一の有効な進め方だと信じている」とし、日米合意に変更がないことを改めて強調した。 

 ただ、玄葉氏は会見で「今年6月に(埋め立て申請の)アクションを起こすことが現実的か。沖縄の理解を得るのはきわめて難しい」と述べ、普天間移設のスケジュールがずれ込むとの見解を示した。防衛省は名護市辺野古の埋め立て申請について6月を想定していたが、先送りされる見通しとなった。野田政権は「再編見直しで日程はがらっと変わる」(首相周辺)としており、辺野古移設が停滞して普天間の「固定化」につながる可能性が高い。 

拡大在日米軍再編の見直しについて会見する玄葉光一郎外相=2012年2月8日、東京・霞が関の外務省

 一方、基本方針は沖縄の海兵隊の移転規模には触れなかった。両政府はこれまでの協議でロードマップで決められた8千人規模を4700人に縮小し、残る人数を豪州やフィリピンなどにローテーション派遣する方向で調整。グアム移転後に沖縄に残る海兵隊については「ロードマップに沿ったものとなる」として、抑止力を維持するため引き続き1万人とする方針だ。 

 玄葉氏は会見で「海兵隊の移転は普天間移設の進行と結びつけずに進める。嘉手納以南の施設返還も可能なところから実施する」と説明。「日米同盟の深化に向けて大きな前進だ」と述べ、普天間問題でぎくしゃくした日米関係が改善されるとの認識を示した。田中直紀防衛相も8日、記者団に「今後、沖縄の負担を目に見える形で早期に軽減していく」と語り、沖縄との関係改善に意欲を示した。 

               ◇ 

 沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事は8日、「米軍基地の整理縮小につながるもので、政府は地元の意向を踏まえた協議を行っていただきたい。(現行の普天間飛行場の)移設案の実現は事実上不可能で、県外移設を求める考えに変わりはない」との談話を発表した。>(2月9日、朝日新聞デジタル

 率直に言って、この報道の内容はわかりにくい。それはこの記事を書いた記者の責任ではない。日米両政府の基本方針が玉虫色の性格を帯びているからだ。端的に言って、今回の米軍再編問題の核となる米海兵隊普天間基地の沖縄県外への移設が実現するのか、それとも辺野古(沖縄県名護市)への移設を明記した2010年5月の日米合意と閣議決定が継承されるのか、あるいは普天間固定化がなされるのかが、はっきりしていないからだ。 

 基本的には、米海兵隊普天間飛行場の県外移設を断固求める沖縄の声を日米両国政府が無視できなくなったから、普天間移設とグアム移転、嘉手納以南の施設返還をパッケージにしたロードマップの見直しを余儀なくされたのである。

 米国政府は、辺野古移設はもはや不可能と考えている。そこで、普天間固定化というシナリオが出てくるが、これも沖縄の世論を考えると困難というのが、米国の率直な見方と思う。仮に普天間基地周辺で事故が発生する、あるいは海兵隊員が住民を巻き込む犯罪を行った場合、反米軍基地感情が爆発し、普天間基地だけでなく、嘉手納基地を含むすべての米軍基地が極度に使いにくくなる可能性が生じることを米国は冷静に認識している。

 日本側の事情に関しては、本件は政治決断を得る段階に達していない。それだから、野田佳彦首相、玄葉光一郎外相、田中直紀防衛相も辺野古移設を前提とする日米合意が生きているという建前で、国会答弁や記者会見などを処理している。

 もっとも野田首相は、日米合意を本気で踏襲し、辺野古移設を強行するか、普天間固定化を容認するか、沖縄県外への海兵隊の分散移設を求めるかについて、そう遠くないタイミングで政治決断をしなくてはならないという認識は持っていると筆者は見ている。

 外務官僚と防衛官僚の間には明らかに温度差がある。外務官僚は、米国政府により現状認識が強く、辺野古移設の強行は不可能で、普天間固定化も地元の政治的反発のコストが大きすぎると見ている。

 現在、普天間問題に関与している防衛官僚は、基本的に守屋主義者(贈賄罪で懲役2年6月の実刑が確定し、現在服役中の守屋武昌元防衛事務次官。辺野古移設の事務方の責任者)なので、 ・・・ログインして読む
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筆者

佐藤優

佐藤優(さとう・まさる) 作家、元外務省主任分析官

1960年生まれ。作家。元外務省主任分析官。同志社大学神学研究科修士課程修了。外務省では対ロシア外交などを担当。著書に『宗教改革の物語――近代、民族、国家の起源』(KADOKAWA)、『創価学会と平和主義』(朝日新書)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『佐藤優の10分で読む未来』(新帝国主義編、戦争の予兆編、講談社)など多数。

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