メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS
 2月16日は故金正日氏の誕生日だった。今年から「光明星節」と名づけられ、民族最大の祭日として大々的に祝うことになった。

 先立つ14日には、平壌で金正日氏の銅像が披露された。1月12日に銅像建立と亡骸の永久保存(ミイラ化)が労働党中央委員会政治局で決定されたことによるもので、銅像は今後全国津々浦々に建てられるのだろう。

拡大金正日総書記の生誕70年に際して制定された金正日勲章(朝鮮中央通信の配信)

 死んだ金正日氏の偶像化の仕上げの一環だといっていいものだが、目的は金正恩氏の権威付けのためだといえよう。まだ若くて実績も経験もない金正恩氏は、父金正日氏の「跡継ぎ」であること以外に最高指導者としてアピールできるものを持たないからだ。

 さて、この銅像といい、遺体のミイラ保存といい、金がかかる。

 しかも、国民生活にも生産にもまったく役に立たない「政治的浪費」である(ちなみに、両江道に住むアジアプレスの取材協力者チェ・ギョンオク氏は「追悼期間中の会議で幹部が『これから将軍様の銅像を建てることになるので金が要る。誠意を見せよ』と言われた」と電話で伝えてきている)

 この世襲後継体制作りのための様々な「政治的浪費」が、昨年から繰り広げられている。その後遺症が、いずれ民衆生活全般に現れるのは避けがたいと筆者は見ている。具体的に見ていきたい。

政治的浪費(1) 立て続けの政治イベント

 昨年12月28日の金正日総書記の葬儀は、おそらくこの10年間で最大の「国家イベント」であったと思われる。葬儀自体にも莫大な費用がかかったと思われるが、大多数の庶民が商行為で暮らす現状では、動員と統制による経済損失が相当大きかったはずだ。全国民は10日間にわたって弔問に繰り返し動員された。追悼期間中は中国との国境はほとんど閉じられ、貿易はほぼストップ。国内の人と物の移動は厳しく統制された。市場活動も食糧販売以外は大幅に制限された。

 2月16日の「光明星節」に続き、金日成生誕100周年の4月15日にも大イベントが計画されている。おそらくこの時に金正恩氏は、党か軍の公式的な地位に就くものと思われる。過去の例から見ても、イベントとその準備のために国民の動員が続き、金品の供出が強制されるだろう。この4月の大イベントに向けて、昨年から「政治的浪費」が繰り広げられてきた。その代表例が平壌再開発事業である。

政治的浪費(2) 平壌再開発事業 ・・・ログインして読む
(残り:約1333文字/本文:約2310文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

石丸次郎

石丸次郎(いしまる・じろう) 石丸次郎(ジャーナリスト/アジアプレス)

1962年、大阪出身。1993年に朝中国境1400キロを踏破。北朝鮮取材は国内に3回、朝中国境地帯にはおよそ75回。これまで750人を超える北朝鮮の人々を取材。2002年より北朝鮮内部にジャーナリストを育成する活動を開始し、北朝鮮内部の情報誌「リムジンガン」を創刊、現在5号を発行。主著に『北朝鮮難民』(講談社現代新書)など。TV報告に『北朝鮮に帰ったジュナ』(2010、NHKハイビジョン特集)など。

石丸次郎の記事

もっと見る