メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

防衛費における「初度費」はなぜ大切か(下)

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 前回述べたように、防衛省は平成24(2012)年度予算より主要装備の具体的な数字を公開するようになった。

 装備調達において開発費、初度費の金額がわからなければ、各装備の実質的な単価を知ることができない。

 例えば海上自衛隊の掃海・輸送機MCH-101の国内生産分の調達単価は66.4億円だ。調達される11機中、国内で生産されるのは9機の予定だ。このため初度費の合計178.96億円を9機に按分すると一機あたり約19.88億円。これを調達単価に加えると86.28億円となり、実質的な調達単価は約30パーセント増となる。

 たった11機ならば輸入のほうが、はるかに調達コストが安くついたはずだ。しかも国内生産といっても半完成品を組み上げて、国産装備を据え付けるだけだ。わざわざコストを高くしようとしているとしか思えない。ところが我が国ではこのような議論が起こらない。

 また航空自衛隊のF-15Jの近代化は、予算案の「近代化」という項目の他に、IRST(赤外線捜索追跡システム)搭載改修、自己防御能力の向上という項目があるが、常識的に考えればこれらはすべて「近代化」としてパッケージ化して考えるべきだ。これらの初度費を合計すると546.69億円となる。

 F-15Jの近代化は約100機に施される予定なので、一機あたりの調達単価はこれまで公表されてきた金額よりも約5.47億円増加することになる。

 これらの数字をこれまで納税者が知ることができなかったのだ。

平成20~24年の初度費=筆者作成

 だが、毎年の初度費がわかるだけでは不十分だ。

・・・ログインして読む
(残り:約2264文字/本文:約2910文字)